THE BUSINESS FUNDAMENTALS
- ゴ ル フ 経 営 原 論 -
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ゴルフは第二次世界大戦後に大きなビジネスに発展した。20世紀は世界大戦から世界恐慌へ、そしてまた世界大戦へと暗黒のうちに幕開けし、半世紀を終ってようやく人々の心にも平和が甦ったところでゴルフは大衆の生活の中に花開いたと言えよう。ゴルフ発祥の生い立ちから考えれば随分遅咲きともいえるが、一端咲いた花は瞬く間に世界中に広がり今や中国、東南アジア、アラブ諸国においても人々の心を魅了している。その魅力は余りにも強烈であるがゆえに、一歩間違えると商業主義や功利主義に利用されて、ゴルフ本来の価値を台無しにしてしまう恐れがある。
私たちはゴルフビジネスに携わる前にゴルフの本質や理念を理解し、ゴルフ文化のよき伝達者・普及者として社会に貢献するものでなければならない。欧米ではゴルフビジネスに従事するものをゴルフプロフェッショナルと称して聖職者と同等の社会的地位を認めているが、それはゴルフが青少年の倫理道徳教育に役立ち、地域社会のコミュニティづくりや高齢者の生甲斐づくりに貢献しているからである。
プロテスタント国に於いてはゴルフプロフェッショナルの天職意識や職業倫理が浸透しているが、アジア日本に於いては娯楽主義や商業主義が先行してゴルフの本質や文化性を侵蝕する危険すらある。ゴルフビジネスに於いては教育事業や文化事業などと同等な心構えを以って取り組まないと、経済的にも社会的にも規模が大きいだけに、ひとつ間違えると大きな問題に発展する恐れがある。米国では1930年代に日本では1990年代に大破綻して大きな社会問題化したのは記憶に新しいところであるが、ゴルフビジネスに携わる人達がゴルフの本質や文化性をもう少し理解していたら、これほどひどい破綻をしなかったのではないかという気がしてならない。
ゴルフが歴史と伝統に支えられる悠久文化であるがゆえに、破綻しても必ず復活する生命力を持っている。それだけにゴルフビジネスに携わる者は専門的な知識と真摯な姿勢を持って取り組まなければならないだろう。それにはゴルフビジネスの領域を明確に分類し、基本概念を体系的に整理して仕事や作業のガイドラインを示す必要がある。
ゴルフビジネスの領域をどのように分類するか難しい問題ではあるが、一般的なビジネスの領域に照らし、日常的に行われている仕事や作業をビジネスと考えて分類した。ゴルフ産業を内容的に見るとコースや練習場などの施設経営、用品用具などの製造販売、イベント企画などの制作運営、レッスンやスクールなどの指導教育、設計建設や芝草管理などの専門職業に分類される。
最も大衆の耳目が集中するトーナメントプロはビジネスの領域に入れるべきではない。ビジネスと呼ぶには余りにも不確定要素が多くギャンブル性が強すぎる。未成年が一夜にして巨万の富を得てスターダムにのし上がるかと思えば、実力のないものは失業者以下の過酷な生活を強いられるようなギャンブラーの世界だからである。
ゴルフゲームと同様にゴルフビジネスにおいても、万人普遍の原理原則や目標基準があって、特殊な才能や特別な努力を必要とせず、一定の教育訓練で到達できる領域がなければならない。そのような観点からゴルフビジネスを仕事や作業として分類するとマーケティング、プロモーション、インストラクション、マネジメント、ポリシーの五領域に区分されるが、メンテナンスはマネジメントの領域に入れて、ゴルフビジネスにもフィロソフィーが重要という考えから中心にビジネスポリシーを置き「プロフェッショナリズム」を取り上げることにした。
プロフェッショナリズムはビジネスに取り組むものの基本姿勢であって、それはマルティン・ルターの天職意識やマックス・ウェーバーの職業倫理観に基づく根本理念にもなっている。このプロフェッショナリズムは欧米のゴルフプロフェッショナルを支える精神基盤でもあるので、ゴルフビジネスを学ぶものにとっての必須テーマと考えて取り組みたい。
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