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THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ経営原論  第二部 ビジネスマネジメント  -
第一章 チームマネジメント
Section 3 経営計画と目標達成

マネジメントにとって大切なことは計画と目標である。Plan-Do-Seeに見られる如く、まず経営計画に従って達成すべき目標が掲げられる。目標に向かって計画が実行され、結果が検証される。その結果に対して評価が下され、評価が低ければフィードバックして改善計画を立て、評価が高ければステップアップしてより高い計画目標を掲げる。このような過程を繰り返すことをマネジメントサイクルと表現し、経営の基本としている。ゴルフビジネスの世界ではこの計画性が乏しく、十年一日のごとく同じ経営を続けているところが多い。経営にとって変わらないことも大切であるが、それがオンリーワンを支える伝統的理念とか個性的習慣ではない限り、カスタマーサイドに立って検証し直すことも大切である。
カスタマーは時代と共に変わる。10年前のカスタマーは10歳年をとったか、既に今はもう存在しないかである。10年という歳月はカスタマー自体が入れ替わり周辺環境や市場環境が大きく変化している。例えば2001年9月11日前と後で米国社会の環境はガラリと変わった。2011年3月11日前と後で日本社会の環境も日本人の思考もガラリと変わった。このような環境変化に対して、あらゆる経営計画は変更を余儀なくされる。経営計画とは常に現状を正しく認識したうえで、現状を少しでも改善改良する努力の繰り返しでなくてはならない。

経営計画の立案

経営計画の立案は余り難しく考えずに旅行プランぐらいに考えた方が良いかもしれない。特に長期低迷期にあっては真剣に考えれば考えるほど何の計画も立たず、結局は意気消沈して何も考えなくなってしまう場合が多い。何かをしなければならないが何をすれば良いか分からない。何かを変えなければならないが何を変えれば良いか分からない。経営硬直状態に陥っている現場は自己防衛と他人批判に終始し、経営者は現場が、現場は顧客が見えなくなっていることが多い。
このような場合に全員が顧客の立場に立って、自分が顧客なら何を求めるだろうか考えてみると良い。ふだん自分が利用している店やサービスに対して、どのような思いや感情を抱いているか話し合ってみれば、カスタマーサイドのニーズやウォンツが段々見えてくるに違いない。とかく供給側と需要側は正反対の考えを持っていることが多いし、経営者と現場スタッフも正反対の意見や感情を持っていることが多い。
スティーブン・コビーは「自分が理解されるより先に、まず相手を理解しなければ相互依存関係は生まれない」と述べている。経営計画を立案するに当たって現場は顧客を理解し、経営者は現場を理解することによって、初めて顧客に歓迎される経営計画が立案できるはずだ。トップマネジメント - ミドルマネジメント - ロワーマネジメント - カスタマーのピラミッドを逆にして、カスタマーを上にトップマネジメントを下に書く人がいるが、これはまさにパラダイムの転換に他ならない。経営計画を立案するに当たって、顧客が望むことを現場が対応し、現場が対応しなければならないことを管理者が支え、管理者が支えなければならないことを経営者が保障する。
経営計画の流れが従来と全く逆になり常に顧客要望型、現場提案型の計画が立案されることになる。この流れに従えば現場より管理者が、管理者より経営者が頭を使うことになり、トップマネジメントは嫌でもカスタマーニーズを知ることになるだろう。最大の問題点は硬直化した経営体質の中で、このようなパラダイムの転換が図れるかどうかで、実行できない場合は残念ながらこの厳しい時代を乗り切ることができず、やがて市場から撤退しなければならない。これを市場原理という。

計画の内容

一般的に顧客はわがままであり、現場は気が利かないものである。顧客要望型も現場提案型の計画も、全て実行しようとしたら現場は混乱し経営は破綻するに決まっていると多くの人は考える。この考えは常識に近い従来の概念であり、パラダイムの転換が図られていない状態をいう。確かにコペルニクスが地動説を唱えたとき、知識人を中心に多くの人たちが混乱し、あんな奴は殺してしまえとまで叫んだ。改革やイノベーションはパラダイムの転換なくして起こりえないが、その時は必ず混乱が起きる。しかし、その混乱は後になって多くの新しい概念や商品を生み出して社会や事業の発展をもたらしている。
一般にサービス商品といわれるものの多くは、カスタマーのわがままが生み出したものが多い。手紙や品物を届けてくれないか。びしっと洗濯をしてくれないか。もっと美味しいものを作ってくれないか。私を綺麗にしてくれないか。
カスタマーのわがままが次々と新しいサービス商品を生み出してきたが、硬直化したゴルフ業界にあっても、きっとカスタマーのわがままが新しいサービスを提案してくれるに違いない。現場はそのわがままを敏感にキャッチしてミドルマネジメントに報告するが、ミドルマネジメントが面倒がって握り潰し、自分の立場だけを考えて否定的に上奏すれば、トップマネジメントの意思決定に至らない。マーケットやカスタマーの最前線にある現場からの報告や提案は極めて現実的でありながら、素晴らしいアイディアに満ちたものも多いはずである。なぜならば、それがわがままや無いものねだりだったとしても、それは取りも直さずマーケットに存在しない潜在ニーズに他ならないからである。事業計画や経営計画はマーケッティングによって立案されるものとすれば、まさにマーケットからの提案や要望こそ見逃してはならない潜在ニーズといえよう。

目標の設定

何かを実行するに当たって目的や目標が無ければ意味がないし持続しない。ビジネスの世界で思いつきや気まぐれは許されないから、必ず何を何のために何処までやるかを明確に示さなければならない。まして組織の中で行われることは組織全体が承知ないし合意していなければ最終的には実行までに至らない。
どんなワンマン社長であっても思いつきや気まぐれは許されない。強引に進めても必ず挫折するか破綻する。だから組織全体が計画の意味と内容を承知していることが必要だが、組織とは個性ある多くの人が集まっているところだから全員が共通認識のもとに合意することは難しい。そこで計画の全容が明らかにされ内容が説明されて目標が設定されるわけだが、このとき現場からの提案によるかトップからの命令によるかで目標の設定と実行計画は大きく異なる。
目標が現場提案によるときは当然目標達成までのプロセスや方法手段、可能性とリスクなどが現場から示されることになるが、目標がトップダウンの命令によるときはリスクをトップが負っても、責任とノルマは現場が負わなければならない。そうなれば現場が設定する目標は責任とノルマを最小限にしてトップが求める目標より小さくなり勝ちである。ましてトップがオーナーや株主の顔色を窺って自己の能力や業績を誇示するために大きな目標や無理な目標が掲げた場合には、現場のモチベーションは下がる一方である。
米国企業のトップはこの種の過ちを頻繁に犯して多くの失敗や破綻を招いている。チームマネジメントにとって目標の設定はチームワークの相乗効果を引き出すものでなければならないから、目標は常にチーム全員の目標でなければならない。チーム全員が目標達成のために一丸となって協力しシナジー効果が発揮されたとき、無理と思われた目標が達成され、満足と喜びを分かち合うことができる。
チームワークにとって目的や目標は命である。リーダーないしチームの誰かが「やろう!」といって目的や目標を掲げたとき、最終的にチーム全員が目的や目標に向かって歩み始めなければチームワークの意義は生まれない。チームワークにとってチーム全員の同意と納得を得ることは絶対必要だが、現実には必ずしもそうはいかない。必ず一人や二人の反対者や反動分子がいるもので、このような時こそリーダーによる強いリーダーシップが求められる。掲げられた目標は全員の結束と協力なくして絶対に達成できないことをリーダーが説明し、目標達成に必要な要件や方法について広く意見を求めることによってチーム全体のモチベーションを高める方法がとられる。
スポーツの世界もビジネスの世界も結果が得られなければ敗北撤退が待っている。競争相手もマーケットも時間の余裕を与えてくれない。リーダーは目標達成のために、ある時は非情の決断をすることも、チームマネジメントにとっては極めて重要であることも承知していなければならないだろう。