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THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ経営原論  第二部 ビジネスマネジメント  -
第四章 デジタルマネジメント
Section 2 情報共有と報連相の徹底迅速化

IT社会はサイバーワールドつまり情報マル見え社会を意味する。だから情報を操作し隠蔽することは犯罪に等しい行為として糾弾される。一方では個人のプライバシーを守るために、他人の個人情報を漏洩し公開することは明らかな犯罪行為として厳しく罰せられる。まさに情報通信革命時代への対応と秩序維持の対策である。現代社会では情報価値が高まり、ひとたび情報処理を誤れば重大な問題に直面することを意味し、情報処理を誤ったために政権運営や企業経営が重大な危機を迎えることが頻繁に起こる。
情報の概念や重要性は簡単に定義し説明できるものではなく、同じ情報も時と場合によって全く違った評価を受けるまことに厄介な存在でもある。情報は時を逸すれば何の価値もないばかりか、時には重大問題に発展することがある。そのために情報伝達は常に一刻を争い、情報伝達手段は常に工夫され研究され続けてきた。のろし、伝書鳩、早馬、飛脚、手旗、通信、電話などを経て今やインターネットという究極とも思われる情報伝達手段が開発され、情報通信革命といわれるほど社会が歴史的に変化しようとしている。
その変化に対応できるかできないか、変化を利用できるかできないかに事業やビジネスの興亡がかかっている。対応できなくて、あるいは対応が遅れたために市場から姿を消す企業も多い。情報伝達手段の変化によって存在価値を失うビジネスも多い。20世紀社会を支えた郵便事業はメールの出現によって衰退したし、有線電話は無線ケイタイに変わろうとしている。新聞テレビはインターネットの前に存亡の危機にさらされているし、印刷出版業もパソコンやデジタルブックの前に明日の命が危ない。学校や教育の在り方が根底から変わろうとしており、廃校に追い込まれる学校や廃業を余儀なくされる教育機関は無数に及ぶだろう。20世紀の商業ビジネスを支えてきた広告宣伝業も媒体メディアが新聞雑誌、看板ポスターからインターネットに変わることによって存在意義が問われている。
私たちの日常にも大きな変化が現れようとしており、子供がカバンに鉛筆・消ゴム・ノート・教科書を入れて通学する姿はいつまで続くか、会社や事務所でソロバン片手に帳簿をつける姿や伝票や台帳に取引を記録する姿は消え、パソコンを触る姿すら消える可能性がある。勉強や読書の仕方から仕事やビジネスの在り方までが根底から変わるに違いない。
つまりIT化とかデジタル化というのは従来の方法とは想像もつかない変化をすることで、本章のテーマであるデジタルマネジメントも、デジタル化することでマネジメントの方法そのものが、想像を超えたかたちでイノベーションが起こることを示唆している。

情報共有と報告連絡

多くの企業や事業所から伝言板、社内報、朝礼がなくなってきている。全社的な全国店長会議や支配人会なども費用効果が問われはじめた。NGFも合宿研修や全国セミナーを行わなくなった。これら全て組織内において情報共有するための情報伝達手段として必須項目だったものが、なぜ姿を消しつつあるのか。
一言でいえば情報伝達手段がデジタル化したのである。全国に販売店を持つ企業や全国チェーン組織などは、莫大な費用をかけて月例会議やミーティングを行い、社長が激励のスピーチをして情報共有と意思統一を図っていた。それをいつまでも続けようとしたところは会社自体が危機に瀕し組織が崩壊した。費用と労力を掛けた割に効果がなかったというより、むしろ逆効果だったことが考えられる。情報伝達と情報共有が目的だったものが、次第に万難排して全国から集まることが目的になってしまい、本末転倒に陥ったものと思われる。
今や一斉メールやインターネット広報、パソコン・モニター会議がグローバルに行われている。莫大な費用と時間をかけて店長や支配人に伝達した情報が、末端のスタッフに届くまでに賞味期限が切れて、集団食中毒を起こす危険がある。社長の指示命令がスタッフ全員に届くのに一ヶ月近く掛かっては組織が機能しない。IT革命に乗り遅れた典型的な例ではないか。情報伝達や報告連絡の手段がデジタル化したのはIT革命によるものである。

情報共有とチームワーク

情報共有そのものがIT革命の産物である。本来情報というものは得られないもの、伝わらないものとされたため費用と時間をかけて収集し伝達していた。だから情報は貴重であり漏れないように努めていたから、情報を共有するのは限られた者同士で通用することだった。現代は違う。仲間やチームが先ではなく、情報共有が先だから、情報を共有するもの同士が仲間になりチームとなる。30年間続いたエジプト・ムバラク独裁政権が情報を共有したデモ組織によって僅か2週間で崩壊したのは、組織が先ではなく情報共有が先というIT時代の象徴的な出来事であろう。
一定方向のベクトルを持った情報を共有する者が群れて組織を成すのは動物の本能かもしれない。情報は発信者が誰かよりもベクトルの方向が大切である。情報共有によって一定方向のベクトルを得たチームには強力なチームワークが育つ。だからチームリーダーは常に一定方向のベクトルを持った情報を発信し続けることが大切だが、もっと大切なことはチーム全体が情報を共有しているか常に確認することである。情報共有はチームワークを育てる出発点と考えられる。

情報伝達の手段と目的

「エジプト政権を倒したデモ組織の情報伝達手段はFaceBookだった」という情報が世界中に電撃的に走った。その情報を得た中国政府は電撃的にインターネット検閲を強化した。事実確認から現場対応まで僅かな時間だったはずだが、その原因をつくったのも迅速な対応を可能にしたのも、情報伝達手段がデジタル化したからに他ならない。IT革命は情報伝達手段を変えたことによって社会変化をもたらし、人々の生活や組織の在り方、仕事の仕方やマネジメントの方法まで変えてしまった。IT革命はケータイと呼ばれる小さな無線通信機の発明によって起きたといえるが、それはガソリンエンジンといわれる強力な小型動力機関の発明によって20世紀の生活様式や産業構造が変ってしまったのに似ている。
動力の伝達手段が変わって20世紀が創られ、情報の伝達手段が変わって21世紀が創られるとすれば、何のために情報伝達するかその目的を明確にすることが如何に大切か理解できるであろう。それは仕事やビジネスの効率を高め、強力に推進するためである。ガソリンが情報に代わり、エンジンが通信機器となって強力な推進力を生み出す。それが21世紀だと考えるならば自ずと情報伝達の手段と目的が何かも理解できるに違いない。情報伝達はケータイやスマートフォンといわれる小型IT機器によって行われ、仕事やビジネスの効率を高め、情報共有することによって市場との一体感やチームワークの推進力を創造するためである。そして経営とはデジタル化された情報を共有することによって事業組織のチームワークを引き出し、より高いコストパフォーマンスを追及することである。これをデジタルマネジメントという。

現場の迅速対応

デジタルマネジメントのパワーは情報伝達の早さと現場の即応性にある。カスタマーからデジタル情報として入った要望や注文が、デジタル情報として担当現場に伝達され、現場からカスタマーにデジタル情報として対応が帰ってくる。このデジタル処理はカスタマーが現場に行かなくても、現場の営業担当者がカスタマーのところに足を運ばなくても、商談やビジネスを成立させる力をもっている。カスタマーは現場に直接要望や希望を伝えることによって、提供されるサービスや商品に対する信頼感を増すし、現場はカスタマーの声を直接聞くことによってマーケットと一体感を持つことができる。
従来のマネジメントはトップダウンとかボトムアップといって、トップマネジメントの指示命令も現場からの報告も、中間管理者を通して情報伝達されるのに時間がかかりすぎた。時間がかかるばかりか、情報が正確に伝達される保証が全くなかった。トップマネジメントは現場が見えず、現場はトップマネジメントが理解できなかったために、階級闘争や労使対決という不穏な体質が残り続けた歴史がある。デジタルマネジメントの進まない事業所や組織には依然としてその不穏な体質が残されており、チームワークやコストパフォーマンスを追及する基盤そのものがない。デジタル化の進まないアナログ組織では、報告も連絡も相談も「稟議書」という手段に依存したシステムによって、何週間も何ヶ月もかけて組織内を回遊し、そのほんどが「検討中」という烙印を押されて棚上げされている。
組織の硬直化はマネジメントシステムの老朽化が原因で、デジタルマネジメントシステムが導入されなければ事業や組織が破綻するまで守られることになるだろう。なぜならば人が多すぎる事業や組織では、古いシステムを守ることが日々の仕事になっているからである。