THE GOLF FUNDAMENTALS
- ゴルフ基礎原論 第一部 ゴルフゲーム -
ゴルフゲームの本質
本来ゴルフは遊びでありゲームであるが、スポーツの概念が広範囲になったのでゴルフもスポーツに含まれるようになった。一般的にはスポーツとは肉体的、躍動的、感覚的、感情的、本能的、戦闘的、開放的、庶民的、合理的、経済的概念で捉えられるように思うが、ゴルフに関してはことごとく反対概念にある。だから最初からスポーツと決めて考えるとゴルフの本質を見失って破綻をきたしてしまう。スポーツではあるが大変異質なゲームであり、いくつになっても若い仲間と楽しめる健全な遊びであることを理解するために、あらためてゴルフゲームの本質を整理してみる必要がある。 第一章で取り上げたとおり、ゴルフの源流を訪ねてみるとスコットランドの人達が如何にゴルフに夢中になったか良く分かるし、国王が禁止令を出したり自ら破ったり誠にほほえましい歴史を持っている。19世紀末に大西洋を渡り米国に伝わってからも、あたかも愉快なインフルエンザの如く忽ちのうちに伝染して全米を覆い尽くしてしまった。日本へは井上準之助が保菌者として帰国したが、当初は急速に蔓延しなかった。戦後になって経済成長と共に急速に蔓延し、バブル崩壊の直前には手が付けられない状態に陥り、崩壊後は大量の犠牲者と多くの後遺症を残して今日に至っている。
原点回帰の必要
もう一度ゴルフを健全な姿に戻し、あらためて国民的な形で普及し直すならば、社会にとっても国民にとっても評価しきれぬ大きな利益をもたらすに違いない。なぜならば、ゴルフゲームには青少年に倫理道徳の観念を植え付けたり、高齢者に生き甲斐を与えたりする神聖な力を内包しているからである。ゴルフゲームに内在するこのような潜在力を引き出すためには、行過ぎた商業主義や娯楽体質を是正して、ゴルフの本当の楽しみや意義が理解できるような基本プログラムを普及することが必要である。 英国に発祥し米国で発展したゴルフゲームは、英国型伝統文化と米国型科学技術の体質を具備していて、プロテスタント特有の強い倫理観を伴っているから人間の内面的成長に役立つばかりか、社会的成長にも役立つことが知られている。それゆえゴルフに投じられた数十兆円の国民資産を後世の人達が有効活用するためにも、ゴルフゲームの本質を正しく理解し言葉や習慣の異なる世界の人々と親善交流を図るためにも、ゴルフの持つパフォーマンスを引き出すことができれば、人材育成の有効手段にもなりうると思う。そのことはゴルフゲームの本質そのものが必ず立証してくれるはずである。
ゴルフゲームの本質価値
ゴルフゲームは他のスポーツや遊びに類例を見ない本質や特質を持っており、多くの人がゴルフに出会ったときから不思議な魔性に惹かれて生涯の友とすることが多いが、その理由は何なのかほとんど分らない。ゲームの本質はあらゆるスポーツゲームの中で最も単純な構造でありながら、一端始めると段々と深みにはまり、気が付けば生涯の友となるのは何故なのか、本当のところは本人も分らず一生を終っている。道楽を定義付けるならば「如何なる犠牲を伴おうと止むに止まれぬ思いを抱かせるもの」といえそうだが、ゴルフに対してそのような思いを抱いている人を内外問わず数々と見ることができる。道楽というと不善なる雰囲気も漂うが、ゴルフに関しては不善を補って余りある善なるものが内在しているために、より一層魔性を秘めた道楽と言えそうである。
道楽はよく人間を変えてしまうが、ゴルフの魔性は人を善良なる方向に変える性質を持っており、そのためにゴルフが教育手段に用いられ、人間形成や人格形成に役立ってきたことが指摘されるのであろう。
ゴルフがキリスト教国に発祥し、プロテスタント諸国を中心に普及してきたことと深い関係があるが、ゴルフに限り厳しい倫理道徳規範を定め自己審判制度を貫いてきたことにゴルフの本質を見ることができる。極めて単純なゲームの根底に流れる思想や理念を理解すれば、ゴルフの普及発展は人々の心を豊かにし、社会を明るくする性質を持っていることが分る。だから一人でも多くの人がゴルフを楽しめる環境をつくれば、理想社会の実現にもきっと役立つと断言することができる。
ゴルフはゲーム内容としてショットゲームとパットゲームに、競技方式としてマッチプレーとストロークプレーに単純分類されるが、近年フィジカルゲームとメンタルゲームという分類や、ゲームのシミュレーションとマネジメントというような管理概念の分類まで出現した。如何なる概念から入ろうとその本質を研究し理解したとき、ゴルフゲームの深さとおもしろさが分るだけでなく、人々の人生を豊かにし人間性を高める秘密の一端に触れることができるであろう。ゲームの本質を研究しながらゲームの中に秘められた魔性を解明することができれば、ゴルフ研究そのものも一層興味深いものになるに違いない。