NGF WORLD Golf Campus Image
  • メンバーログインは右の [ Login ] ボタンをクリックしてください。
National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ基礎原論  第一部 ゴルフゲーム  -
第四章 ゲーム
Section 3 ストロークプレーの思想と特徴

思想

ストロークプレーが始まったのは、1744年スコットランドのリースに創設された「ジェントルマン・ゴルファーズ」によって、13条のルールが制定された頃とみてよいのではないか。長年マッチプレーによってゴルフが行われてきた時代は勝負するもの同士が事前に取り決めれば問題なかったはずだが、クラブが創設されて大勢が同時に試合をするようになると、事前にやり方やルールを決めておかないと争いの原因になりかねない。そこで新しいクラブが創設されたのを契機に簡単なルールを定め、プレーの方法としてストロークした回数を競うストロークプレーが誕生したのではないか。この方法ならば大勢の人が同時に同じ場所で試合できるし、審判がいなくてもジェントルマンクラブの会員なら正直に申告すればよいではないか。ということでストロークプレーが始まったと考えられる。
最初は13条の基本ルールがあればジェントルマンたるもの、必ずや正直に申告するはずと思いきや、そうはいかなかったようだ。プロテスタントにしてジェントルマンの集まりであったはずが、勝負となると人が変わったというより、原罪むき出しの罪びとの姿が次から次へと露出され、神の前にとても申し開きできる状況ではなかったのではないか。ストロークプレーが「審判不在の競技」ではなく「神の審判に基づく競技」として確立するまでの過程を辿れば理解できる。膨大な「USGA裁定集」をみると、人間とはかくも利害にさとく心貧しいものかと考えさせられる。例えば「泥と一緒にヘッドにへばり付いたボールを落とそうとクラブを振り回したら、その回数は全てストロークに加えるべきではないのか」、「ボールが割れて飛び散ったら、一番大きな破片をインプレーにすべきではないか」、「ボールが空中衝突したら不可抗力=act of Godとすべきだ」等々噴出したくなるような裁定が山のようにある。
ストロークプレーの思想は「キリストに倣って正直に謙虚に寛容に誠実に自分が有利にならぬよう己を裁きなさい」ということで「審判たる神は全てをご存知だから、その責任は全て自分自身が負わなければならない」という前提で成り立つゲームである。それ故にゴルフはキリスト教文化としてキリスト教圏に栄えた。だからストロークプレーは「神の前の自己責任・自己審判ゲーム」といわれ「裁いてはならない。裁かれないため。」という聖書の言葉を理念としている。このように騎士道精神によって成り立つマッチプレーに対して、ストロークプレーはジェントルマンシップによって成り立っているといえよう。

特徴

ストロークプレーの歴史は浅いが、ゲームとしての内容は実に深いものがあり特に近年のイノベーションによる科学的進化には目を見張るものがある。ストロークプレーをコースとの闘いと定義したのは、やはりボビー・ジョーンズと考えてよいのではないか。彼はマッチプレーで試合に臨んでいたときからアンクルパーとかオールドマンパーという概念をもっており、対戦相手に惑わされることなくコースと真剣勝負していた。この考えが原点となって米国ではゴルフイノベーションが起きたが、1970年代になってUSGAはストロークプレーを更におもしろくする研究と努力を始めている。
ボビー・ジョーンズが考えたとおりゴルフは基本的に人とコースの真剣勝負で、人に技量の差があるとおりコースにも難度の差がある。通常コースには68.2、72.0というようなコースレートが示されるが、これはスクラッチプレーヤーといわれるハンディキャップ0前後のUSオープン決勝戦に進出できる技量の人が達成できる標準スコアである。一般ゴルファーがこのようなスコアで回ることは不可能で、オーバーしてもよい数をハンディキャップで表していると考えられる。つまりHP18の人はコースから18のハンディキャップを貰ってプレーするから、18ホール全てがボギーをパーとして、18オーバーの90ならパープレーしたことになる。ところがほとんどのゴルファーが自分の技量を知らず、全てのホールをスクラッチプレーヤーのパーで回ろうとしているから、散々な目に遭うのである。ハイカーがハイキング気分でアルプスに挑むようなもので、結果は目に見えている。スマートなプレーをするためには、挑戦相手の特徴や技量難度を知って対応策を考え作戦を立てて臨まなければ、惨めな敗北を繰り返すだけで、やがて楽しさも喜びも失せてくるであろう。

コースマネジメント

山にも標高数百メートルから数千メートルまであるように、コースにもコースレート(CR)やスロープレート(SR)が低いものから高いものまである。
CRはスクラッチプレーヤーがどれ位で回れるかを示す指標として、65から75程度まであってパー72なら72.0が標準とされる。
SRはボギープレーヤーにとっての難易度を示す指標として55から155まであって、113が標準とされる。
例えばHP18のプレーヤーがCR68.0、SR113、Par72のコースをプレーするとき、ボギープレーヤーにとっては極めて標準的なコースであることが予測できる。
HP0のスクラッチプレーヤーが68で回ってくるなら、HP18のプレーヤーは86で回れる可能性がある。14ホールはボギー、4ホールはパーが取れる可能性があるから、まず最初の作戦としてスコアカードのホールハンディキャップ欄1から14までをボギーホールとし、15から18までをパーチャレンジホールとしてみる。
つぎにスコアカード距離欄からプレーするティーの総距離とホール別距離をみて、自分の飛距離と比較検討してパーチャレンジのチャンスがどの程度あるか予測する。コースガイドが用意されているなら、見取図を見てナビゲーティングするが、誤解してはならないのはコースに用意されているスコアカードもコースガイドも、全てハンディキャップ0の人を対象にして作られていることである。
プレーヤー自身の技量認識がなくては、とてもナビゲーティングはできないから先ずもって自分の技量指標を把握しておかなければならない。この技量指標がHandicap Indexといわれるもので、USGA基準に則って算出されている自分自身の最新技量指標に基づいて、いくつかのボギールートをシミュレーションする必要がある。コースに用意されているスコアカードもコースガイドもHandicap Index 0用であるから、スコアカードに記載されるパーは全てHP0の人のパーであり、コースガイドに示される攻略ルートもHP0のパールートである。一般プレーヤーはこれを参考にしてコースマネジメントしても、自分自身のマネジメントにならないから、一般プレーヤーは絶えずボギールートを探索する習慣を身につけることが大切である。

ストロークプレーはコースと闘うゲーム方式であるから、相手となるコースの情報をどの程度持っているかによって勝負が左右される。そのうえ自分自身の最新の技量と調子を現わすハンディキャップ・インデックスを参照して、ゲームを有利に展開するためにシミュレーションすることがコースマネジメントであるから、コースと自分自身に関する情報は絶対に欠かすことができない。コースマネジメントは
  (1) コースレーティング
  (2) ハンディキャッピング
  (3) ナビゲーティング
からなり、必要な情報として
  (1) コースレート
  (2) ホールレート
  (3) スロープレート
  (4) ハンディキャップインデックス
  (5) コースハンディキャップ
  (6) ホールハンディキャップ
  (7) ヤーデージ
  (8) ピンポジション
  (9) グリーンスピード
 (10) コースレイアウト
があるが、この際USGA基準によらなければマネジメントが噛み合わない。

USGAは1970年代からストロークプレーのイノベーション研究を初め1980年代からUSGAコースレートシステムやハンディキャップシステムを普及させ、全てのコースで全てのプレーヤーが互角の勝負ができる環境をつくってきた。この段階でほとんど全ての国がUSGAシステムに加盟したが、英国と日本は加盟しなかった。英国は伝統的なリンクスランドを擁するために、人為的にコースを改修したりデジタル化することができなかったからであるが、日本はこのシステムの根拠や必要性が理解できなかったようだ。コースマネジメントを理解するにはUSGAシステムを理解しなければならないが、詳細は「ゴルフ基礎原論 第二部 ゴルフマネジメント科学」を参照されたい。