- ゴルフ基礎原論
- 目 次
- 第一部 ゴルフゲーム
- 第二部 ゴルフマネジメント科学
- 要 綱
- INTRODUCTION
- 第一章
セルフマネジメント - INTRODUCTION
- -1 ボールコントロール
- -2 スイングコントロール
- -3 マインドコントロール
- 第二章
コースマネジメント - 第三章
スコアマネジメント - 第四章
ゲームマネジメント - 第五章
マネジメントサイエンス - おわりに
THE GOLF FUNDAMENTALS
- ゴルフ基礎原論 第二部 ゴルフマネジメント科学 -
Section 3 マインドコントロール
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セルフマネジメントの対象となるボールとスイングをコントロールすることに対しては、かなり理論的かつ物理的にコントロールすることが可能となった。メンタルゲームといわれるゴルフゲームでは、僅か2秒足らずのスイングで全て結果が決まる。クラブやボールの完成度が高まるにつれてプレーヤー自身の精神の安定性が求められるようになり、心をコントロールすることがセルフマネジメントの鍵となってきた。上級者になるほどミスショットの原因はスイング自体にあるのではなく、そのときの心理や精神状態にあることは昔から知られているが、それがゴルフを難しくしている原因であるともいわれる。「人間は感情の動物」であり「生涯、悟りを開くことができない存在」だからであろう。
いくらボールやスイングがコントロールできても、マインドがコントロールできなければ実戦では役に立たない。それほど重要な課題でありながら未だに確かな理論もノウハウも確立されていない。マインドがコントロールできないために今までどれほど多くの有能なプレーヤーが選手になり損ない、選手生命を絶たれたことか。平凡なアマチュアプレーヤーですら、それなりにマインドコントロールの大切さと難しさを経験している。ゴルフに限らず、マインドコントロールは人間にとって最も重要な課題なのである。
心理学
全米随一のスポーツ心理学者ボブ・ルーテロ博士は、多くのトッププレーヤー達を指導し、緊張場面や試合に強い選手に育てている。心理は技量や能力に関係なく誰にも潜在的に存在するもので、いつ誰にどのような形で現れるか全くわからない。それだけに厄介な存在で、既に顕在意識から消え去っていながらも脳裏に潜んでいる過去の恐怖体験が突如として顕在化したり、記憶も消滅したはずの幼児体験が原因になることもあるらしい。学者によって人類の原始体験が潜在的に遺伝子に伝わったものだとも言うが、実際にこの領域まで入り込んでマネジメントできるかとなると甚だこころもとない。
ルーテロ博士はプレーヤーに自信を持たせることと、プレーに集中させることを大切にしているそうである。例えばニック・プライスの場合、ショットするときはボールに意識を集中しないでターゲットに意識を集中するよう指導をし、パットするときはカップを意識しないで、カップの先のスパットないし仮想ターゲットに意識を集中するよう指導したという。このように目的意識を変えることによって、ストロークのことは考えないようにしたという。練習充分な人ならショットするにもパットするにも、2秒以内で終わる出来事にアレコレ考えてもロクなことはないと承知しているから、迷うことなくスイングをする。
集中力というと目的に対して集中することのように考えがちだが、過度の目的意識は過剰な緊張を生み自然な動きを阻害するようだ。だから敢えて目的意識を変えて、別な目的に意識を集中させて本懐を達成することも大切なようだ。
トム・カイトの場合、ショットするときもパットするときも、徹底的に同じルーティーン(手順)を繰り返すことによって邪念や迷いが生じないよう指導したという。そして同じテンポ(スイング時間)を維持することに集中して間違いなくいつものショットやパットが繰り返せるよう、正確な反復再現性を確立したのであろう。ルーテロ博士のいう心理的な自信と集中力は、コットレル博士のいう物理的なテンポの反復再現性にも通じるものと理解される。
集中力
ルーテロ博士の指導は、過度な緊張から本来の集中力が阻害される場合に敢えて目的意識を変えることによって、本来の目的を達成させる心理作戦のようだ。反面チップショットやバンカーショットの場合は、目的に意識を集中させることによって成功確率が高くなるともいう。チップやバンカーからは常にカップを狙うことによって、アプローチとしても成功確率が高くなるようだ。これもひとつの心理作戦だろうが、博士はこのような積極的な姿勢をチャレンジといい、チャレンジにとって大切なことは自信を持つことという。自信を持つということは常に成功パターンがイメージされていることで、反対に自信がないということは成功パターンがイメージできないことをいう。そうであるならば、練習やトレーニングによって成功体験を積み重ねて、頭の中が成功パターンのイメージで埋め尽くされるまで実行するしかない。どのような場面に遭遇しようと、必ず目的に集中する習慣が身に付かなければ、どれほど練習やトレーニングを積んでも実戦に役立たない。やはり集中力も練習やトレーニングによって習慣化することではないか。しかし人間によらずあらゆる生き物は絶体絶命に追い詰められたとき、驚異的な集中力を発揮する。ということは、生物は全て神から集中力という本能が与えられていて、それが発揮できないのは本能を妨げる別の意識が働くからに違いない。
自信
成功パターンをイメージすることが自信の裏付けとするならば、成功したことがなければイメージできない。だからルーテロ博士は、何回も同じことを繰り返して成功パターンをルーティーン化することだという。いつもの通りやれば必ず成功するという確信が自信に他ならない。ところが生徒は勝とうという意識が強すぎてルーティーンそのものを忘れることがあり、連続バーディーをとって緊張感が薄れ、反って集中力を失ってしまうこともあるそうだ。
いずれにせよ人間である以上は必ず失敗が伴う。ゴルフは「ミスゲーム」と言われるほど失敗の多いゲームである。ミスショットのあとネガティブにならないことも自信を持続させるのに必要なことだ。うまく「パーを拾った」、「ボギーをセーブした」という具合に失敗をリカバリーすることを楽しめれば一流だ。チャレンジとはポジティブに前へ前へとゲームを進めることを意味し、自信とは失敗しても決してネガティブにならないことを意味する。ベン・ホーガンはパーフェクトストライカーと言われるほど完璧なショットの持ち主だった。練習するときも、ターゲットを定めるのに正面の丘に建つ家ではなく、家の右窓か左窓かを問題にするほど正確性を追求していた。しかし彼はパットに自信を失ってツアープロを引退した。
意識改革
ゴルフにとっては完璧を追求するより、ゴルフを楽しむこころ、チャレンジする意識が大切である。トム・カイトは22回挑戦してやっとUSオープンに優勝した。ニック・プライスは31歳まで勝ち方を知らなかった。自分自身を疑うことなく夢を追い続けることこそチャレンジ意識であり、毎回毎回チャレンジし続けることが自分や周囲をハッピーにする秘訣となって、やがてそれはチャンピオンへの道につながることを悟った。ジョン・デイリーは自分の失敗に怒ることで毎回のようにゲームをぶち壊していた。ジョンは家族に対して良い人生を提供することを考え続け、父親の責任、夫の責任を果たすことが自分の仕事だと考えるに至った。怒りを納めるために飲んでいた酒は、友達と友好関係を保つ酒に変わり、穏やかに仕事を楽しめるようになったという。やがて勝利と賞金は喜びと共に向こうからやってきた。
意識の変化はアマチュアにとっても、ショットやゲームに大きな影響を与える。
* 今日一日こんな贅沢な時間を与えられ、感謝して楽しまなければ損だ。
* 1番ティーショットの緊張感はゴルフの醍醐味だから大いに楽しもう。
* ドライバーは飛ばすクラブではなく、飛ぶように造られたクラブだ。
* 大切なのはフェアウェイにボールを置くことで、飛ばすことではない。
* 第1打180ヤード打てば、2打・3打160ヤードで500ヤード行く。
* 飛ばない・乗らない・寄らない・入らない。それをボギーというようだ。
* パーオン3パット・ボギーオン2パット・ダボオン1パット全てボギー。
* スコアカードに書いてあるパーなんて、あれは全てプロ用なのだ。
* グリーン周りにはいくらでもパールートがあるから、そこからが楽しみだ。
* グリーンの真ん中に乗れば、どこに切られたカップもすぐ近くにある。
* 300ヤードのショットも30センチのパットもゴルフでは同じ1打。
* ゴルフゲームはショット数36、パット数36の合計パー72で構成される。
* プロでも36ショット以下にならないが、アマでも36パット以下になる。
* 何番で打っても150ヤードは150ヤード。スコアに使用クラブは書かない。
* 飛ばないことを嘆くまい。スコアの60%はショートゲームで決まるのだ。
* たった一打ごまかして一生疑われるとは、実に割の合わぬ話だ。
* 来たときよりきれいにして帰れば、自分の心はもっときれいになる。
* 上機嫌でも不愉快な気分でも、料金はスコアに関係なく同じなのだ。
* 家に帰ってもう一度1番からプレーし直せば、二度ゴルフが楽しめる。
* ゴルフに出会えた人生は、出会えなかった人生に比べて何倍も幸せ。
意識の変化はショットやゲームを変えるだけでなく、日々の生き方や人生そのものを変える力がある。だからゴルフマネジメントの達人は、人生の達人にもなりうる。
大脳生理学
ゲーリー・ワイレン博士は心理学者ディック・コープ教授との共同研究によって大脳生理学的立場からマインドコントロールを研究している(The New Golf Mind-1978、Golf Digest)。人間の心理や行動をつかさどる大脳の働きに着目しその生体メカニズムを明らかにすることによって、マインドをコントロールする方法を考えたのである。
思考や行動を司る大脳は左右二つに分かれており、それぞれ違った働きをする。
左脳はアナライザーとして分析係を担当する。状況を分析し判断する役目。
ショット以外のゲーム全体をコントロールする。
右脳はインテグレーターとして実行係りを担当し、指令に従い行動する役目。
ショットそのものをコントロールする。
ゴルフは左脳の助けを借りないとどうにもならないスポーツゲームで、動物的反射神経でボールを打ち続けてもゲームにならない。そこで左脳からの指令を待って行動=ショットすることになるが、それには三種類の指令方法がある。
言葉による指令
左脳が分析、判断、決定したことを言葉によって右脳に指令する。右脳は言葉を受けて実行する。言葉は適切でなければならない。言葉が曖昧だと右脳は混乱し、違った行動をするか中途半端な行動になる。
視覚による指令
視覚によって記憶したイメージが直感的に右脳に指令され行動に移される。「まね」がこの行動原理で、若いとき特に子供は「まね」の名人である。年齢とともに左脳が発達して「まね」が苦手となる。
筋肉による指令
同じ行動を反復体験することによって左脳を通さず直接右脳が働いて行動する。反射神経とも考えられ、視聴覚障害者の実験によって明らかにされたが、いわゆる「体が覚える」ことをいう。
三次元学習や3Dトレーニングは、この三種類の指令に基づくものである。
理屈は理解できても現実に対応することは難しい。人により個人差があるから
自分なりの工夫や対応を考えなければならない。
- 心身相関現象 -
肉体が精神に及ぼす影響を逆に応用する方法で、アドレスルーティーンがこれに当る。習慣化された行動から入ることによって緊張した状況でも無意識に普段のショットができる。
- 同一要素移転 -
練習のとき本番そっくりの状況で練習しておくと、いざ本番と言うときうまくプレーできる。一般には演習とかエクササイズという。
- 反復練習効果 -
運動技能調査によると、最大能力を発揮させるには同じ事を繰り返し行うのが一番だという。また一回に集中的に練習するより、定期的に分散して練習するほうが効果的ともいわれている。間違った方法を反復記憶させたことは「悪いクセ」となって身に付く。
スポーツ心理学
- 達成意欲 -
松田岩男博士(元NGF顧問・日本体育学会会長・日本スポーツ心理学会会長)はスポーツ心理学の立場から達成意欲を重視した。達成意欲とは「困難なことをうまく成し遂げたい、人より優れた成績を挙げたい、というような価値ある目標に対して、自己の能力を発揮して障害に打ち勝ち、できるだけその目標を達成しようとする意欲」であるという。つまり物事をうまく成し遂げようとする意欲のことを言う。
この達成意欲には二つの相反する心理が作用しており、強い成功願望心理として物事をうまくやり遂げたい、よりよく達成したい、成功したいという意欲である。その一方で失敗回避願望があり、失敗したくない、失敗の不快を避けたいと言う心理が働く。実際にはどちらの心理が強いかで達成意欲が測られる。
達成意欲の強い人は課題の達成に積極的に挑戦し、失敗回避願望の強い人は目標達成意欲が弱く消極的になるという。
それならば失敗回避願望が皆無ならば、失敗を恐れず積極的に目標を達成できるものか、といえば必ずしもそうではないようだ。ある程度の失敗回避願望が適度の緊張感を生み、より強い成功願望となって達成意欲を高めるそうである。つまり緊張のない状態は達成意欲を弱めるだけではなく、精神の集中力や身体の運動機能も低下させて、結果的に目標が達成できないことが多いといわれる。
- 目標と達成意欲 -
達成意欲を高めるには達成すべき目標を掲げなくてはならない。人は目標や目的がなければ意欲も情熱もわかない。目標は常に達成可能な範囲でなければならないが、高すぎる目標も低すぎる目標も、かえって悪い結果を招くことが報告されている。松田博士によれば、目標達成の可能性が50/50のときが最も意欲が高まるという。また目標達成の可能性が1/3のときが最も高い達成率を示すという。高い目標に挑戦意欲を掻き立てられるタイプもあれば萎縮するタイプもあるから、目標設定はあくまでもマインドコントロールできる範囲内でなければならない。自信の裏付けが成功体験の集積にあることを思えば、短期目標達成の満足感がマインドコントロールを日常化し、能力を高める手段となる。
- 達成意欲を高める方法 -
(1) ゴルフの価値を高く評価認識してモチベーションを高める。
(2) 一段一段ステップアップ可能な段階的目標を設定する。
(3) 押付けやノルマではない自発的積極的トレーニングをする。
(4) ある程度の苦痛を課し、克服する満足感を体験する。
(5) 進歩や向上の結果を評価するシステムを導入する。
スポーツ心理学ではプラス思考のマインドコントロールを目指している。
信仰と祈り
ゴルフはセントアンドリュウスを発祥の地とするキリスト教文化なので、神の審判の下に行われる神聖なゲームとして、特にキリスト教圏で行われてきた。そしてゴルフの盛んな国はイギリス、アメリカ、オーストラリア、南ア連邦、カナダ、スウェーデン、ドイツなどプロテスタント国である。従ってゴルフから神、信仰、祈りを切り離して考えることはできない。ボビー・ジョーンズは絶えず聖書を読み、祈りを捧げてグランドスラマーになった。ベン・クレンショーは師匠ハーベイ・ペニックスの葬儀に、祈りを捧げてマスターズに優勝した。
今では韓国選手の多くが聖書を読み、祈りを捧げて強くなっている。ゴルフのマインドコントロールといえば信仰による祈りを指すが、信仰の確信を持っていなければ祈る習慣がないという問題がある。「技術指導は三流選手に、心理指導は二流選手に、信仰指導は一流選手に」といわれる。一流選手になるほど技術や肉体を超越した精神や魂の領域に達しているのであろう。神代の時代から戦いと祈りは切っても切れない関係にあった。英雄ダビデも、軍神上杉謙信も、名手ボビー・ジョーンズもみな祈りの人であった。祈りなき戦いはただの争いであって、そこに神聖なる精神や魂の領域はない。大事な試合や運命を左右する戦いに臨んで、自分の精神を完璧にコントロールできる人間はいないことは万人が認めるところだから、強く賢い人ほど信仰による祈りに頼るのであろう。
とくにゴルフは神の審判に基づく神聖なるゲームと言われるだけに、神の祝福なくして勝利などありえないと考えられている。真剣勝負になればなるほど、ワンストロークの不安や恐れがプレッシャーとなって、強くのしかかってくる。そのような場面で深呼吸法だの、羊が一匹二匹だの、虚心坦懐だのと言われてどれほどの効果があるかは考えただけで分かるであろう。
ゴルフは徹底した個人競技でありメンタルゲームであるから、一端プレッシャーがかかり始めたら容易なことでは脱出できない性格を持っている。そのうえ競技時間が長くプロなら4日間も続くから、平常心を保てと言われてできるものではない。ゴルフ病のほとんどが精神的スランプで、特に「イップス」と呼ばれるパットやショットのときに全く体が動かなくなる症状は、完全な精神病の一種で治療の方法は見つかっていない。才能を高く評価されながら重度のイップスにかかり、何年もメジャートーナメントから遠ざかっていたベン・クレンショーは師匠に勝利を誓い、神に祈りを捧げてマスターズに出場した。彼の祈りは聞かれるか全米が注目する中で、見事優勝したベンは大方の予想通りウィニングパットを決めて跪き、泣きながら感謝の祈りを捧げたのである。ゴルフゲームは発祥の起源から、神との係わりなしに語ることができないほど神聖な領域を有しており、祈りによってマインドコントロールされてきたことは誰もが認めるところである。
セルフマネジメント概観
一見単純なゲームに見えるゴルフが、経験を重ねるほど複雑なゲームに思えてくることは多くの人が体験的に味わう。そしてゲーリー・ワイレンがいうとおりゴルフそのものは極めて単純なゲームなのに、プレーヤーである人間が複雑なために奥深いゲームとなるのである。科学の進歩によって道具は画期的に進化した。さらに製造技術の進歩によって道具の品質は画期的に均一化した。プレーヤーは道具に対して絶対の信頼を持てるようになったのである。その結果、楽に飛距離が得られるだけではなく、ボールを自由自在にコントロールすることができるようになった。ゴルフはボールを遠くに飛ばすゲームではなくて、コントロールして確実に目的地に運ぶマネジメントゲームなのである。
道具の進化はスイングにも画期的な変化をもたらした。クラブに対する信頼性が増したことと機能的に進化したためスイングの基本が確立し、一定のスイングを反復することによって安定したショットを放つことができるようになった。さらにショートスイングからフルスイングまで、同じ原理原則に従ってコントロールすることができるようになった。距離・方向・弾道を自在にコントロールできるようになったら、ゴルフは簡単すぎてつまらないゲームになるだろうと多くの人は考えた。しかし結果は全く逆だったのである。
ゴルフゲームは物理原則や生体原理に従うフィジカルゲームの性格より、心や精神に従うメンタルゲームの性格のほうが遥かに強いことが分かってきた。そのうえワンラウンド18ホールをプレーするのにフィジカルゲームに要する時間は僅か3分に対し、メンタルゲームに要する時間は240分であることも考えられるようになった。人間が肉体の存在か精神の存在かを考えるのに似ている。段々とボールやスイングをコントロールすることより、プレーヤー自身の心理や精神をコントロールすることのほうが遥かに難しいことが分かってきた。マインドコントロールは人間そのものの重要な心の問題だからである。
人間は自分の心をコントロールできれば一級である。心は実に多彩にして複雑な動きをする。恐れ、不安、驚き、嘆き、悲しみ、動揺、落胆、喜び、歓喜、自信から無心にいたるまで心の状態を表す言葉だけでも実に多い。それほどに人間の心は常に変化していて定まるところを知らない。それどころか、心が体のどこにあるのかすら分かっていない。心の動きや変化は自分自身で制御できないばかりか、予想もつかないから一般的には対応の仕様がないのである。
心には気分、感情、心情、心理、情念、理念、精神、魂と思いの強さを表す言葉がたくさんある。どのように表現すればそれぞれの言葉の違いが分かるのか、具体的に説明することはとてもできない。いくら科学が進歩しても、この領域だけは一向に進歩していない。否、全く解明されていないと言うのが正しい表現だろう。心の病に予防法はないだけでなく、原因がわからないから治療法がない。健康な心とは何か。健全な精神とは何か。善良な魂とは何か。人類は永遠の課題として真剣に取り組んできた。その結果、真心、純真、無心、聖霊など自分自身の肉体から遊離した、汚れなき存在として理解するようになったようであるが、ゴルフが神の審判による神聖なるゲームであることを考えるなら邪念を捨てた純粋な心でプレーしない限り、絶対にマインドコントロールなどできるわけがないことだけは間違いなさそうである。
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