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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ基礎原論  第二部 ゴルフマネジメント科学  -
第三章 スコアマネジメント
Section 2 スコアデータ

ティーショット成功率、パーオン率、平均パット数、ワンパット率、バンカーショット率、OB発生率などプレーヤー自身のプレーの実体を客観的に判断するデータはマネジメントの基本となる。デジタル化された自分のパフォーマンスを標準値と比較検討して差異分析することは、スワット分析といわれる自分自身の強みと弱みを知るうえで大いに役立つはずである。少なくともプレーヤーである以上は自分自身に関する何らかの情報データを持ち合わせて当然と思われるが、現実には自分自身のデータを認識するプレーヤーは極めて少ない。
日本ではプロゴルファーでさえ自分自身のデータを自ら管理する者は案外少なく、ツアー機構から発表される統計データ ‐STATS‐ によってはじめて認識するプレーヤーは少なくないはずである。案外一般アマチュアゴルファーで自分のスコアをパソコン入力しデータ化している人がいることに驚かされるが、どのようなデータをどのように分析してマネジメントに役立てているかとなると甚だ疑問である。データには次のようなものがある。

ドライビング・ディスタンス -Driving Distance-

ティーショットの平均飛距離のこと。男性ゴルファーにとって最も関心の高いデータであるが、男性の多くはドライバーが飛ぶのは巧いからに違いないという大きな錯覚から、飛距離コンプレックスに陥り自分のパフォーマンスを見失っていることが多い。ツアー機構のマネジメント会社はプロトーナメント会場で専門的に出場選手のデータを計測して発表するから、メジャー競技出場者は自分のドライビング・ディスタンスを承知している。しかし大多数を占めるシード権のないプロは計測される機会がないから自分の飛距離を知らない。一般ゴルファーにとっては自分の平均飛距離など知る由もない。多くの場合、自分が一番飛んだときのイメージを幻想的に記憶していて、もっと飛ばす人になりたいと考えているようである。従ってこのデータを正確に把握している一般ゴルファーは存在しないはずで、自分が巧くならないのはドライバーが飛ばないせいだと思い込み、高額な長尺ドライバーを何度も買い替えてはひたすら練習場でドライバーショットの練習に励む姿が多くみられる。一般ゴルファーにとってはドライビング・ディスタンス≒ヘッドスピード×55ヤードが自分のポテンシャルであると承知していれば充分であろう。

平均スコア -Scoring Average-

グロススコアの単純平均値のこと。ドライバーショットの練習に励んだ結果は平均スコアを押し下げる効果があっただろうか。飛ばす練習に励んでいる限り平均スコアが良くなる保証はない。グロススコアは飛距離と無関係のデータでショット数とパット数にペナルティストロークを加えたものであるから、ドライバーの飛距離が伸びたとしても、リカバリーショット数とペナルティストローク数が増えれば当然のことながら平均スコアは悪くなる。
平均スコアが良くなるとはゲーム毎のグロススコアが少なくなることで、ショット数、パット数、ペナルティストローク数が相対的に減少することをいう。USPGA、JPGAの統計データを見ても賞金ランキング1位は大概平均スコア部門1位である。更に付け加えるならばドライビング・ディスタンス部門の上位者に賞金ランキング上位者は少ない。ゴルフの巧拙とドライバーの飛距離が直接因果関係にないことをデータは如実に物語っている。平均スコアこそゴルフの巧拙を表わすバロメーターと思われる。

ティーショット成功率 -Driving Accuracy-

ティーショットの正確性は極めて重要である。ゴルフが巧くなることはドライバーの飛距離を伸ばすことより、ティーショットの正確性を高めることにあると気付いた人は上達が早い。ティーショットの結果はセカンドショットの条件を決定的にする。ティ-ショットを曲げて深いラフやバンカー、林の中に入れればセカンドショットを決定的に難しくすることは全てのゴルファーが承知している。またティーショットを大きく曲げれば、OBやウォーターハザードが決定的にセカンドショットの機会を喪失させることがある。最悪のケースはティーショットが深い谷や林に入って、脱出するのに5打も6打も要した場合はそのホールのスコアを悪くするだけではなく、その日のグロススコアを回復不能にすることだ。一番ホールでこのアクシデントに見舞われたら、スコア以前に気分が一日中回復することはない。アクシデントと言ったが本当は考え違いや未熟のなせる業で、本来は充分回避できた不注意・不始末に過ぎない。ティーショットが正確な人は、一番ティーショットから飛ばそうとか目の覚めるショットをして周囲を驚かそうとは考えていない。フェアウェイに打つことだけを考え、タイガー・ウッズでさえドライバーを使わないことが多い。ティーショットの正確性はゴルフの最重要課題と考えて良いが、大切なのは最高飛距離ではなく正確な平均飛距離であることを強調したい。
類似概念にフェアウェイキープ率があるが、ティーショットの正確性や成功率とは若干異なる。フェアウェイの広さはコースによりホールにより大きく異なるので、フェアウェイを捉えたショットが必ずしも正確であり成功したわけではない。100ヤードしか飛ばなかったティーショットがフェアウェイ中央にある場合も、左サイドを狙ったはずが右サイドフェアウェイに残った場合も決して正確であり成功したわけではない。正確とは狙ったポイントにボールを運ぶことであり、成功とはそのポイントに運べたことをいう。本当はプレーヤー自身にしか分らないことなのである。

パーオン率 -Greens in Regulation-

各ホールの規定打数マイナス2打でグリーンを捉える確率のこと。ゴルフゲームは通常36ショット+36パット=パー72を規定打数として構成されている。これはひとつの仮想概念で、必ずしもそのように回らなければならない訳でもなく、また回れる訳でもない。そもそもパーの概念が曖昧でティ-インググランドやスコアカードに表示されるパーの数値は、距離を基準に機械的に定められた規定打数だから本来気にしなくて良いものであるが、実際は大変気になって判断を誤ることが多い。つまりスコアは前述したとおりショット数+パット数+ペナルティストロークであるから、パーオンしたか否かは全く問われない。ゴルフの巧い人は巧みにパーオンを避けて、安全でアプローチしやすいグリーンサイドにボールを運ぶのは、その方が安全でパーも取りやすいことを経験的に知っているからである。
パーオン率はあくまでもデータ概念であって、その人のゲーム内容やスタイルを知るうえで有益な数値と考えてよいだろう。パーオンにこだわると、どうしてもティーショットの飛距離にこだわり、セカンドショットを無理することに繋がる。そうなるとパーオン率は多少よくなってもかえってスコアそのものを悪くし、結果的に本末転倒に陥ることもある。

寄せワン率 -Scrambling-

アプローチを寄せてワンパットでパー以下に収める確率のこと。前項のパーオン率と二律背反の関係にもあって、巧いプレーヤーにはパーオン率は低いが寄せワン率が高い人が多い。寄せワンという言葉は正式なゴルフ用語とは思えないが、なかなか言い得て妙な用語で一度聞けばすぐ分るから日本のゴルファーに愛用され続けたのだろう。バンカーセーブ率とかパーセーブ率という用語も使われていたが、ショートゲームの巧さを表現するには寄せワン率またはスクランブリングという言い方は悪くないように思われる。
近年グリーン周りを難しくしたコースが増えてきたが、どんな所からでも多彩なアプローチで巧みに寄せてパーを取るプレーヤーを見ると、ゴルフの巧さを感じさせられる。用具の進化に伴ってドライビング・ディスタンスは飛躍的に伸びたが、コースも距離を伸ばし、グリーン周りを難しくするようになった。そのためショートゲームが重視されるようになり、デーブ・ペルツによればスコアの60%以上はショートゲームによって決まるというが、女性や高齢者にとっても大切なデータに思われる。ただし一般のゴルファーにとっては寄せワンの意味を寄せワンボギーにすべきで、ホールハンディキャップを加えてパーセーブと考えなければマネジメントを誤る。

平均パット数 -Putts per Round-

ワンラウンドあたりの平均パット数のこと。ゴルフは最終的にパット数で勝負が決まるから、最も大切なデータと考えられている。多くのスコアカードにはスコア記入欄の横にパット数を記入する欄が設けてあるほど重視されてきた。だからスコアマネジメントはパット数を記録するところから始まると言っても良い。スコアとパット数を記録しデータ化すれば、多くの関連データが導き出され、プレーの内容やプレーヤーのスタイルが推測できる。一般的にパットの重要性は語られる割に行動に示されることが少ない。一般ゴルファーで自分の平均パット数を正確に把握している人は意外に少なく、対策を立てて実行している人は更に少ない。パットの練習は練習場でできないうえ、自宅でもマットを使った同じライン同じ速さの練習しかできない。本当の練習はコースの練習グリーンでしかできないから、多くの人にとって練習の機会がないといえよう。
しかし常に平均パット数を把握し、ラウンド毎に平均パットを上回ったか否か意識することからマネジメント意識が芽生え、スリーパットを少なくし、寄せワン率を高めて平均パット数を減らす努力が達人を育てる。スリーパットを少なくするにはファーストパットを慎重に行うようになるだろうし、寄せワン率を高めることはワンパット率を高めることであり、アプローチ技術が向上することを意味する。結局、パットの名人はアプローチ技術やアプローチパットの上手な人で、結果として平均パット数が少ない。パット数を記録することからマネジメント意識が芽生え、パット数を意識することからパットに対する慎重さが芽生え、結果的に平均パット数を減らすことになるだろう。

その他のスコアデータ

スコアという記録情報をデジタル化すればコンピュータの計算機能によって色々なデータを導き出すことができる。バーディー、パーの取得率やボギー、ダブルボギー、トリプルボギー以上の発生率。ショート、ミドル、ロングホール毎の平均スコアやバーディー、パーの取得率。その他OB発生率やバンカーショット率など算定できる。データそのものに興味を持てば幾らでもデータ化することは可能だが、マネジメントに役立てるならそれほど多くは要らない。大切なのはプレーヤー自身に有益な情報をデータ化し欠点や長所、特性を知ってマネジメントを通し自分自身の最大パフォーマンスを発揮することにある。明言すれば一般ゴルファーにとってどんな詳細データもそれ以外に何の使いみちもなく、眺めているだけなら自己満足に過ぎない。