- ゴルフ基礎原論
- 目 次
- 第一部 ゴルフゲーム
- 第二部 ゴルフマネジメント科学
- 要 綱
- INTRODUCTION
- 第一章
セルフマネジメント - 第二章
コースマネジメント - 第三章
スコアマネジメント - 第四章
ゲームマネジメント - INTRODUCTION
- -1 インフォメーション
- -2 スタティスティックス
- -3 ストラテジー&タクティクス
- 第五章
マネジメントサイエンス - おわりに
THE GOLF FUNDAMENTALS
- ゴルフ基礎原論 第二部 ゴルフマネジメント科学 -
Section 1 インフォメーション
INTRODUCTION | << | >> | -2 | スタティスティックス |
マネジメントの第一歩は情報収集や情報分析などから始まる。ゴルフは基本的に自然が相手であり、人は自然の前に幾度となく打ちのめされ辛酸をなめてきただけに、挑戦するコースや自然条件に関する情報の重要性は語り尽くせない。コース難度、設計レイアウト、グリーンコンディション、気象天候などコースの特徴に関する情報がインフォメーションの基本をなすが、コースがパブリック化してきただけに営業目的もあって積極的に情報公開をするようになった。インターネットの普及も情報公開に大きな役割を果たしており、コースに関する情報や特徴を知る上で大いに役立っている。従来日本のコース情報というと会員権情報か交通情報、破綻情報か料金情報に限られていたが、今後はプレーヤーにとって必要な情報が公開されるようになるだろう。
コースの特徴
ゴルフコースは自然の地形を利用して造られるために同じ形態のものはない。市街地や平原に造られたフラットなコースも設計者の意図によって全く違った形をしており樹木や湖沼、人工障害などによって全ホールとも違った景観特徴を持っている。そのひとつひとつに美観に隠された戦略罠が仕掛けられておりプレーヤーはただ見とれている訳にはいかない。海岸線に造られたリンクスコース、河川に造られた河川コース、湿地帯に造られたレイクスコース、自然林に造られた林間コース、砂漠地帯に造られたデザートコースなど実にさまざまであるが、それぞれの特徴があって興味尽きない。同じ自然環境に造られても設計やレイアウトが異なり、それぞれが人の顔や表情のように個性があって一度見たら生涯忘れられないほどである。
ゴルフゲームはそれほど個性ある相手と闘う競技であるから、相手の特徴を理解し個性を知っておくことは闘いを有利に展開するうえで重要な要因であることは誰にも分る。ゴルフは本来障害物レースのようなもので自然障害、地形障害、人工障害を如何に克服するかを競い合う競技だから、障害に特徴があればあるほどプレーヤーは強い関心を抱かざるを得ない。特徴がありすぎて二度と来たくなくなるコースもあるが、かえってそういうコースに惹かれるゴルファーもいるから簡単に評価することはできない。
コースは積極的に情報を開示して、挑戦者にその特徴や個性を充分理解してもらい何度でも挑戦してもらうことが営業上大切だが、パブリックコースがどのようなゴルファーを顧客ターゲットにするかは重大な経営戦略であり、特徴や個性を時々変えることは今後多くなるだろう。それゆえに挑戦者であるプレーヤーはコース情報を入手して対策を講じ、闘いを有利に展開しようとするだろうが、この情報収集こそコースマネジメントの基本となる。
情報内容
闘う前に必要な情報のうち最も大切なのは、アベレージゴルファーとってはスロープレート、トッププレーヤーにとってはコースレートである。自分のインデックスと対比してスコアの予想を立て、具体的な作戦を立てるためである。ティーによってそれぞれ数値が異なるから、自分がどのティーに挑戦するかも検討しなければならない。本来ティーの選択権はプレーヤーにあってコースにはない。日本のコースはプレーヤーにティーの選択権を認めていないから、女性がレギュラーティーを使用したりビジターがバックティーを使用すると注意されることが多い。競技においてもコースから使用ティーを指定され、通常のプレーにおいてもコースの指示に従うことになっているが、特にバックティーを使用するにはキャディーマスターの許可が必要とされる。休憩を挟む18ホール制やツーグリーン制と並んで日本固有のシステムで欧米諸国では見られない制度である。しかし本来はプレーヤーが自分の意思でティーを選択して自らコースマネジメントしなければならないから、ティーに関する情報及びティーの選択はゲームをマネジメントする最初の課題である。ゴルフは一端プレーを開始したら18ホール連続して同一条件のもとでプレーすることが原則である。
ティーを選択したら次に大切な情報はヤーデージで、各ホール及び18ホール全体の距離を把握しておく必要がある。距離の長いホールは前方ティーを使用し、短いホールは選択したティーからプレーするわけにはいかない。最後まで同一条件で闘うのが基本精神で、都合により勝手に使用ティーを変更したスコアは無効である。距離はゲームをマネジメントするうえで重要な要因であり、プレーヤー一人ひとりにパフォーマンスがあるから、ホール毎に自分なりのナビゲーティングを行わなければ必ず設計者の罠にはまる。
正確な距離情報はコースが事前公開しているしスコアカードにも必ず記載されているから、事前に対策を講じる必要はないと思うかもしれないが、実際その場に立つと現実距離と予測距離に大きな感覚的差異がある。これは設計者が仕掛ける罠で周囲の景観や背景、樹木の大きさなどによって相対的に遠く感じたり近く感じる人間の錯覚から起こるものである。頻繁にプレーしている人は距離感が養われているが、プレーする機会の少ない一般ゴルファーにとって目測は難しい。そのためコースにはナビゲーションマップが用意されていたり、フェアウェイに距離表示板が設置されていたり、随所に設置されたスクリンプラーのキャップにグリーンセンターまでの距離が刻印されている。距離そのものはごまかしのない絶対値であるから、距離を基準に自分のクラブ別パフォーマンス、風速風向湿度などの気象条件、高低傾斜などの地形条件、グリーンスピード・ピンポジションなどの設定条件を考慮して距離調節を行わなければならない。設計者の罠はグリーン周りに仕掛けられることが多く、150ヤードのグリーンが100ヤードに見えたり200ヤードに見えたりすることがある。そうかと思えばグリーンの奥行きが無くて池の淵や空中にフラッグスティックが立っているように見えることがあるが、本来コ-スデザインの原理原則からありえないことで、それは全て設計者の罠である。だから正確な距離情報をもとに確信を持ってクラブ選択し自信を持ってショットしなければ、設計者の思惑通り罠にはまってそのホールは負けることになるだろう。
各ホールのパー以上に大切な情報はホールハンディキャップである。各ホール1から18までOUTには奇数がINには偶数が付されているが、これは難度の順位を表わす数値で、どのホールにハンディキャップが付くかを示す極めて重要な情報である。例えばあるコースのブルーティーでプレーするとき、プレーヤーのインデックスに対してホールハンディキャップ12ならば、1から12までのホールはボギーをその人のパーとする。これはゲームをマネジメントするうえで極めて重要な要素で、ハンディホールをパールートでナビゲートするかボギールートでするかによってマネジメントは根本的に異なる。ハンディホールはそのプレーヤーにとって難度の高いホールであるから、通常のパールートでナビゲートしたために結果的にトリプルボギーにするケースは多い。情報の有無に係わらず明らかにマネジメントの失敗である。
ただしホールハンディキャップに関して、日本のスコアカードに記されている数値はホール難度の順位を表していないことを承知していないとマネジメントを誤る。誤解か無知によるものと思われるが、JGAはホール難度の実質順位に関係なくホールハンディキャップの配置規定を定めたため、JGA規定に従うとホール難度の順位を表さなくなるという決定的なミスを犯してしまった。日本のスコアカードに記されているホールハンディキャップ数値は実質なんの意味もなさないことを知らないと、ゲームマネジメントに重大な支障をきたすことも承知しておく必要があるだろう。
グリーンスピード
グリーンの速さやコンディションによってパット数が変わりスコアに大きく影響する。初中級者はスコアが悪いのはショットのせいだと思い、上級者はパットのせいだと思う。初中級者はミスの原因を自分の技量不足と素直に認めているが、上級者になるほど自分の技量に自信があるためグリーンの影響を受けやすい。僅かな距離感の誤差や曲がり具合の変化にも気付くので、ひとたび情報に対して不信を抱き始めると、色々な面に連鎖反応がうまれてゲーム全体を台無しにする恐れがある。ゲームマネジメントは色々な要素がリンクされ、小さなひとつの要因がゲーム全体を左右するほど大きな影響力を持つことは度々経験するところである。ビッグトーナメントでは1メートル以内のパットを失敗して優勝戦線から脱落する姿をどれほど目にすることか。グリーンの速さやコンディションは午前と午後で大きく変わる。その変化に対応するマネジメントが巧くいかずに脱落する選手も多い。逆に最終日に巧くマネジメントして逆転優勝する選手もいる。どちらの場合もグリーンスピードやコンディションに関する情報を的確に把握して、それに対応するマネジメントができたか否かにかかっていると思われる。
一般ゴルファーにとってもグリーンスピードは重要である。グリーンの速さは芝の刈具合によって決まるが、通常スティンプメーターといわれる単純な計測器で測り何フィートという言い方をしている。一定の傾斜が付いた滑り台状の計測器を使ってボールを転がし何フィート転がったかを測る。多くのコースが早朝グリーンを刈った後スティンプメーターで測り、スタートハウスに速さを掲示しているが、通常8フィート前後と表示していることが多い。グリーンは速いほど良いと思っている人もいるが、必ずしもそうとは言えずプレー回数がさほど多くない一般ゴルファーにとっては8フィートくらいが丁度良いとも言われている。余り速いと3パット、4パットが続出してゴルフをつまらなくするし、余り遅いと芝の影響を強く受けて短いパットが入らなくなり緊張感が失われて更にゲームをつまらなくする。いずれにせよ、スタート前に必ず練習グリーンでグリーンスピードを調べ、実感として感覚調整しておくことも大切なゲームマネジメントのひとつであるが、グリーンコンディションやカップの位置はコース側が一方的に決めるので、プレーヤー側は受動的に対応するしかない。
気象条件
大切な事前情報として気象条件がある。海外だけでなく国内でもコースによって立地条件が異なるから、そのコース独特の自然環境や気象条件を備えている。気温、湿度、標高の他季節風や偏西風など飛球やゲームに大きな影響を与える要因についての情報はマネジメントするうえで貴重である。気温、湿度、標高は飛距離に重大な影響を及ぼすし、風は距離方向の双方に重大な影響を及ぼす。スコットランド地方のように18ホールを回る4時間のうちに何度も気象条件が変わる環境では、服装の準備までマネジメントの重大要件になる。またアリゾナのように猛暑乾燥地のコースでは10リットルもの水を用意しなければ命にかかわることがある。また天気が変われば、この世の終わりが来たかと疑うほど激しい雷雨が襲うから、ゲームを中断して避難するタイミングを誤れば命を落とすことすらある。気象に関する情報はゲーム内容だけでなく命にかかわることなので決してマネジメントを疎かにすることはできない。穏やかな気象条件のもとでキャディーに世話されて育った日本のゴルファーは、セルフプレーでは全てが自己責任に基づく自己管理に委ねられていることを認識しなければならない。マネジメントの範囲は広い。
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