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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ基礎原論  第二部 ゴルフマネジメント科学  -
第五章 マネジメントサイエンス
Section 1 システムトレーニング

NGFインストラクターズガイド基礎理論編(トレーニング論;浅見俊雄、金子公宥共同執筆)によればトレーニングは大別五種類に分類されるが、その五種類のトレーニングを目的や方法別に組合せて、最大パフォーマンスを引き出そうとするマネジメントシステムをシステムトレーニングという。またトレーニングを発展的に継続させる方法にステップアップ・スパイラル・システムがある。基本となるトレーニングは以下の五種類をいう。

I 理論トレーニング -Logical Training-

長い歴史と伝統を有するゴルフというスポーツゲームを理解するためにはセオリーやサイエンスに関する理論を体系的に学習し、試行錯誤や無駄の少ない効率的なトレーニングを行うだけでなく、エチケットやルールを支える思想や精神の理論的根拠を学習して、揺るぎない技術基盤や精神基盤を構築するトレーニングが必要である。理論トレーニングが不充分だと、初中級者の場合にはプラトー現象という成長停滞状態に陥る危険がある。上級者の場合には他人の言動や自己不審によって精神基盤が崩れて調子を崩し、長いスランプに陥る危険がある。

II 技術トレーニング -Technical training-

初心者はもちろん上級者になっても、体系的セオリーに基づく基本メソッドを合理的に反復練習し、基本技術の習熟に努めなければならない。中級者になると基本技術を疎かにし高等技術を追い求めがちだが、どんな高等技術も基本技術が習熟した姿に他ならないから、上級者ほど熱心な基本技術の反復練習者であることを見落としてはならない。ゴルフの技術とは基本的に僅か2秒前後のスイングに過ぎないから、入門の段階から徹底してスイングづくりをすべきで、最初に正しい体の動きを修得したものは生涯の財産を得たに等しい。スイングトレーニングに大きな貢献をしたのはスイング形成8種ドリルと5段階スイングコントロールであるが、ワンスイング・スクウェアシステムを基本とする現代ゴルフはこの二つのスイングトレーニングシステムによって支えられるといえる。

III 体力トレーニング -Physical Training-

基本セオリーに叶った科学的根拠のあるトレーニングを行う。ゴルフの特性から考えて、無理のない日常体力トレーニングを身につけることが大切で、トップアスリートのような過激な筋肉トレーニングをすることや、瞬発力をつけるトレーニングはゴルフにとって逆効果といわれる。ゴルフに必要な体力とは10キロ程度の距離を、疲れを感じないで程度に4時間歩ければ充分で、重さ300グラム程度のクラブを振る体力は一日数十回の素振りで維持できるといわれている。大切なことは日常生活の中でコンスタントに行うことで、プレー直前の俄かトレーニングは効果がないより危険であるといわれている。一般アマチュアゴルファーの年間プレー回数を考えると日常化されたウォーキングやジョギング、ストレッチ体操や柔軟体操による生活体力で充分ではないかと考えられる。

IV 精神トレーニング -Mental Training-

五種類のトレーニングの中で最も重要にして難しいとされる。そもそもゴルフはフィジカル性よりメンタル性が強いとされているが、メンタルは倫理、道徳、精神、心理、感情、意思など広く深い領域を指す概念だからである。メンタルトレーニングは試行錯誤の段階でまだ何も確立されていないというべきかも知れないが、人間科学の中でメンタル領域は最も高度にして困難といわれ、人間の手には負えないとも言われている。従って一般にスポーツのメンタルトレーニングとしては心理、感情、意思の領域までしか取り扱われていないようである。

V 戦術トレーニング -Strategic Training-

厳密に言えば戦略的戦術トレーニングというべきで、五種類トレーニングのうち戦略は理論トレーニングによって、戦術は実戦トレーニングによって強化するものだから、システマティックに組み合わせて理論的に一貫した高度な戦術を生み出す方法が考案された。ゴルフイノベーションによって開発されたマネジメントゴルフはコース側に高度な戦略をもたらしたため、プレーヤー側にも高度な戦略と戦略的戦術が求められるようになった。対戦相手となるコース側の戦略が読み取れなければプレーヤー側の戦略も戦術も組み立てられない。現代ゴルフはマネジメントゲームとして知略戦略の闘いになったことによって新たな楽しさが生まれた。戦術トレーニングとはコース側の戦略を読み解き、どのような手段で対応するか学び演習訓練することをいう。具体的にはシミュレーション・エクササイズが効果的なトレーニング方法と考えられる。

システムトレーニング -System Training-

ゴルフに関する従来のトレーニング方法は前近代的なマラソンに腕立て伏せ、素振りに打球練習、パット練習にラウンド実習を黙々と繰り返す非合理的な反復型が多かったが、現代はもっと合理的な方法を採用している。長期計画に基づいて戦略目標と戦術手段を明確にして、トレーニングそのものをマネジメントシステムの一環としている。上記五種類のトレーニング方法を融合し自主的にプラクティス&エクササイズ、ラーニング&トレーニング、データ&アナライズ、ストラテジー&タクティクスを繰り返すトータルマネジメントシステムに発展させている。場当たり的な思い付きトレーニングは、本当の実力が付かないうえ目標も結果も見えないから、間もなくマンネリに陥るか徒労に終って成長が止まるが、このことを学習心理学では「プラトー現象」といっている。システムトレーニングはプラトー現象といわれる中途挫折に陥らないよう目標と結果、予習と復習、反省と改善を繰り返しながら、常に楽しみと喜びを追求する方法として考案開発された。
例えばスイング形成を行う場合、まずゴルフスイングが振り子原則に基づく6つの物理原則と4つの生体原理からなるスイングメカニズムであることを学習する。基本スイングを形成するには8つのドリルがあるが、そのドリルを使ってスイング形成のトレーニングを行う。ドリルによるエクササイズの過程で原則や原理に合っているかチェックしながら習熟するまで反復練習する。クラブを持たずにスイング運動を覚える段階、クラブを逆さに持って片手ずつ覚える段階、両手で持って全身で覚える段階、正常にクラブを持ってヘッドの重みを感じながらフィーリングを覚える段階、実際にボールを打つ段階という具合に一段ずつ階段を昇るようにトレーニングを積み上げていく。
この過程に理論、技術、体力、意思などの異なった領域のトレーニングが融合されており、左脳と右脳を働かせた合理的なトレーニングが進められることになる。基本技術についても映像・文字・言葉による三次元学習から左脳と右脳を働かせた反復再現性の高い技術の習得を実現することができる。このように現代は、複数のトレーニング方法を融合してシナジー効果を出し、楽しみながら高い技術を修得するシステムが開発されている。

ステップアップ・スパイラル -Step-up Spiral Training System-

練習とかトレーニングは退屈な反復動作を繰り返す忍耐の連続で、そこに楽しみや喜びを見つけることは難しい。同じことを反復する姿は螺旋階段を昇る姿に似て、同じことを繰り返していながら気が付けば高いところに上り詰めていることを意味する。しかし目標や目的のないところをくるくる回っている場合や、間違ったことを反復している場合には時間が経過しても何の進歩も得られないから、そこには疲労や倦怠感だけが残る。「こんな事を繰り返して何になる」「もっと良い方法があるのでは」という目的懐疑や目標喪失からプラトー現象に陥る。
このような状態に陥らないためにまず確実な自分の目標を設定する。10日後の姿、1ヶ月後の姿、3ヵ月後の姿、1年後の姿、3年後の姿を想定してそこに到達する無理のないトレーニングメニューとクリアすべき課題を掲げる。今の自分と違う将来の姿を想像することによって、今の苦痛が楽しみに変わり将来の自分が希望に変わることになるが、確実にステップアップするためにはマネジメントの基本となるべきPlan-Do-Seeが確実に繰り返される必要がある。ステップ毎に目的と実行計画があり、実行した事実確認があり、結果に対する検証や評価があって次のステップに進む。結果に満足な評価が得られなければフィードバックして検証し直してみる。結果が出たら次のステップに進む。という具合に一歩一歩螺旋階段を昇るように基本練習やトレーニングを繰り返すが、時々休んで振り返ってみると思った以上に高いところにいる自分に気付くものである。
人の成長も植物の成長と同じで一日中見つめても何の変化もないが、時間が経てば必ず成長し変化している。どんなに焦っても花も咲かなければ実もならない。花が咲き実もなることを確信して日々楽しみながら一段ずつ螺旋階段を昇るトレーニング方法をステップアップ・スパイラルという。