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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ経営原論  第一部 ゴルフビジネス  -
第二章 プロモーション
Section 5 データ分析&バッジテストによるモチベーション高揚

プロモーションが供給サイドの積極的手段であるのに対して、モチベーションは需要サイドの積極性を引出す手段である。「馬を水辺に連れて行っても、馬が水を飲むとは限らない」という例えの如く、積極的なプロモーション活動を行ったからといって、必ずしもカスタマーやマーケットが積極的に行動するとは限らない。「笛吹けど踊らず」という諺のように、供給サイドが一方的・独善的にプロモーションを進めたからといって、必ずしも需要サイドが行動するとは限らず、冷ややかな反応を示すこともしばしばある。需要サイドが強い関心を示し積極的な参加意識を持つには、それなりの動機付けが行われ意欲が高揚しければプロモーションにならない。この需要サイドの発意高揚を促す促進手段をモチベーションという。

データ分析

どんなに緊張したときも、どんなに楽しかったときもゴルフは夢のように終わるし、反対に苦渋に満ちた一日も、過ぎ去ってみれば何故あんなことになったか理解に苦しむ。手許に残るものは常に変り映えしないスコアだから初中級者は楽しかったことだけを、上級者は悔しかったことだけを胸に秘める。しかし殆どの人はフィードバックして結果を分析し、課題を研究することはしない。
モチベーションとは「もう一度楽しみたい」「もっと上達したい」という前進する意欲であるから、Plan-Do-Seeのマネジメントサイクルをパワーアップする添加剤のようなものであるが、具体的にはデータがその役目を果す。「もう一度」とか「もっと」という感情は抽象的モチベーションで具体化しない場合が多い。抽象概念や抽象表現がモチベーションとして持続しないのは、誰もがもつ人間の習性かも知れない。更にその習性は、良いことは持続せず悪いことは中断できない厄介な特性を持っているから、その特性を的確に刺激する意味でデータやデータ分析が利用される。
データは数値で表現された非情な事実確認であり現状認識であるから、殆どの人が一度はその策にはまる。例えば運動不足の人や喫煙者が異常データを示されてびっくり仰天、翌日から生活改善に踏み切るが、暫くすると忘れてまた元の生活に戻るケースは良く見られる。学校の成績表はモチベーション効果満点で、成績表がなければ熱心に勉強しなくなるのは私一人だけではあるまい。試験と成績表に操られて学生時代を無事終えられた。
データはよほど几帳面な性格か専門家でない限り、継続して記録し分析することは多くの人にとって難しいが、理由は手間が掛かることと多少の専門知識を必要とすることによる。ゴルフに関する限り100人に一人も自分のデータを記録している人はいないので、プロモーションの一環としてデータ分析を導入するならばモチベーション効果を高めるに違いない。
データ分析だけが独立して存在しても余りモチベーション効果がないのは、セルフマネジメントの難しさを物語っている。確かに最初のうちは現状認識に役立っても、段々そのデータに慣れてきて刺激にならなくなり、やがてそれもマンネリ化する。人間にとって自分自身をマネジメントすることは実に難しいことだが、その難しさをサービス商品化し、カスタマーに提供することによってプロモーション効果を高め、販売促進に繋げることが経営の狙いである。

バッジテスト

人の努力や労苦には成果や報酬を必要とする。成果の伴わない努力や報酬の伴わない労苦は、マンネリ化以前に挫折の原因となる。人は目的や目標をもって努力や労苦を継続できるもので、それが徒労であると感じたとき虚脱感に襲われスランプや挫折の原因となる。(インストラクターズガイド:学習心理学参照)
一般ゴルファーの努力は報われることが少なく、挫折しそうになっては思い直し、もう止めたと思ってはやり直しているのが常である。ゴルフのおもしろさが大の大人にそうさせるのだろうが、経営サイドはそれをビジネスチャンスと思わずに傍観していて良いものだろうか。
ナショナルゴルフスクールは1年40教程を修了すると修了証を発行しているが、1年続けることも大きな努力であり修了証を2枚も3枚も持っている人がいることを思うと、スクール生にとって励ましでありひとつの成果に違いない。修了証の発行は既に40万枚を超えていることがそれを物語っている。しかし、スクール生や担当インストラクターにとって大きな悩みは、修了証を手にしても成長や実力向上の跡が目に見えず、それを実感できないことにある。「きれいなスイングですね」という他人の褒め言葉がモチベーションになっているものの、結果がスコアに現れない限り実力向上に実感が伴わない。スイングメイクとスコアメイクに直接因果関係がないために、コースに行ってラウンド結果が出る度にモチベーションが下がることに対して、供給サイドはいつまでも無策であってはならない。
バッジテストとはラウンド結果であるスコアカードを担当インストラクターに提出して、9段階に設定された技量証明バッジを取得する制度である。

 

参照:
ハンディキャップ / クラス・クラスバッジ

USGAハンディキャップインデックスと連動させて、国際基準の技量を証明するシステムなので、技量向上がバッジという目に見えるかたちで表彰されることによって大きなモチベーションになると考えられる。日本の伝統武芸は段位というかたちで技量証明すると同時に、継続努力へのモチベーションとしても役立っている。ゴルフではハンディキャップを競技用とするだけでなく、モチベーションツールとしても役立てるべきであろう。
ビジネスの観点からすれば、単にリピーターの確保や販売促進の手段と考えずに、カスタマーが心から喜ぶ顧客満足-Customers Satisfaction-手段と考えるべきで、カスタマーが真に求めているもの、喜びとなるものは自分自身の努力に対する「ご褒美」ではないのか。努力に対するご褒美こそ「表彰バッジ」に他ならない。