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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ基礎原論  第一部 ゴルフゲーム  -
第二章 セオリー
Section 6 物理原則から見たスイングメカニズム

ペンデュラムスイング

完成したワンスイングは常に一定のテンポで同じ運動を繰り返す。この運動をスイングモーションと名付けペンデュラム ‐Pendulum‐ と見なしたのが現代スイング理論の根拠である。最近は余り見かけなくなったが大きな柱時計の振り子がその語源で、その振り子運動をペンデュラムスイングという。ペンデュラムはムーブメントから動力を得て運動(スイングモーション)を開始するが、まず軸が固定されその軸を基点(スイングセンター)に運動する。運動を開始するとペンデュラムは一定の方向(ディレクション)を往来し、扇型の面(スイングプレーン)を形成する。ペンデュラムの先端は往きも帰りも同じ点を通過して正確な半弧(スイングアーク)を画き、一回の運動に要する時間(スイングテンポ)は一定に保たれる。ゆえにペンデュラムスイングの物理的原則はディレクション、モーション、センター、プレーン、アーク、テンポの6つに集約することができるとしたのがコットレル理論である。このペンデュラムスイングの基本原則は大変理解しやすく、どの原則に反しても時計が運動を停止することから一層の理解と確信を持つことができる。かつてスイング論は百家争鳴といわれるほどいろいろな説があったが、どの説を信奉するも全く個人の自由ではあるが、万人普遍の基本理論は何かと問われれば、このペンデュラムスイング理論が簡潔明瞭にしてほぼ完璧と断言できる。スイングを巡る物理原則もいろいろあって、タイミング、リズム、遠心力、加速度、慣性モーメント、軸回転、二軸論、反発係数、固有振動数など一瞬ハット思わせるような概念が次々と広告や雑誌に現れるが、振り子の物理原則を基本概念とする限り、いずれも派生原理や別概念であることに気付くはずである。

スイングコントロール

振り子の原理に基づくワンスイング理論が確立して、同じ原理に基づくスイングコントロール法が確立したが、ストロークの大きさを定義するのにアナログ時計の文字盤をイメージしたイメージクロック ‐Imaginary Clock‐ の概念が利用されるようになった。振り子が左右対称に運動することからストロークの大きさを7時-5時、8時-4時、9時-3時、10時-2時に分類定義した。幼稚な手法に思えるが、近年確立された学習心理学のイメージトレーニングを応用したもので、今ではビギナーからトッププレーヤーまでが利用している。大きさとか強さを表す概念は極めて感覚的なもので、それを感覚的な言葉で表現しても的確に捉えるのは難しい。目一杯とか力一杯の如く能力のマキシマムを表現する言葉は誰もがほぼ的確に捉えることができるが、コントロールされた程度の差を表現する言葉は捉えにくい。例えば「やや大きめ」という場合と「やや小さめ」という場合、それは同じ大きさを表すかというと人によって画くイメージは違うはずである。同一人でもその時の状況や気分によって異なることは体験的に承知している。「やや大きめに打とう」、「やや小さめに打とう」という感覚は頻繁にミスの原因となることは誰もが体験済みだ。そのためコントロールの度合をデジタルやアナログで表現し、その都度あまり誤差のないイメージを画けることが大切である。特に緊張場面でマインドコントロールができないときに、どうしてスイングコントロールができるか。50ヤードのアプローチに臨んで、障害物がなければピッチングウェッジで8時-4時、障害物があればサンドウェッジで9時-3時という具合に使われる。時計をイメージしながら振り子の大きさを変えることは、誰にとってもSimple & Easyな方法で同じ物理原則に基づくワンスイングコントロールの業である。

セオリー&メソッドの情報化

このようにセオリーもメソッドも、言葉やイメージで明確に定義できなければ情報伝達することが難しいだけでなく、自分自身でも反復再現することが難しくなる。そのためセオリーはトッププレーヤーの共通点から誰にでも当てはまる原理を見出し、誰にでも理解できる簡潔明瞭な言葉で定義付けられるようになった。セオリーは経験のない第三者に伝達可能でなければならないし、誰にも同じように理解されなければならない。メソッドは技量に関係なく実行可能でなければならないし、誰にも納得されなければならない。
このように振り子原理に基づいてスイングメカニズムが解明され、物理原則に基づくワンスイング論が確立してから、ゴルフは誰にとっても学びやすく上達しやすいものになったが、ゴルフスイングにとって最大の問題点はプレーヤー自身のメンタリティーにあることを忘れてはならない。ゴルフスイングは生体原理からも物理原則からも見事にメカニズムが解明されたが、メンタリティーのメカニズムはまだ何も解明されていないというのが現状である。それゆえにゴルフは生涯学習であり、悠久文化といわれるのであろうが、やがてはメンタルコントロールの概念も少しずつ情報化されて、精神や感情をコントロールできるようになると有難いのだが。