- ゴルフ経営原論
- 目 次
- INTRODUCTION
- 第一部 ゴルフビジネス
- 要 綱
- 第一章
マーケティング - INTRODUCTION
- -1 マーケット縮小&顧客
減少時代の対応研究 - -2 人口動態・潜在需要と
ニューカスタマー研究 - -3 ニューカスタマー開拓と
育成プログラム研究 - -4 団塊世代復活とジュニア
ゴルファー育成研究 - -5 地域ゴルフ活性化と
クラブサークル研究 - -6 次世代ベストカスタマー
の研究 - 第二章
プロモーション - 第三章
インストラクション - 第四章-1
経営マネジメント - 第四章-2
施設マネジメント - 第五章
ビジネスポリシー - 第二部 ビジネスマネジメント
THE GOLF FUNDAMENTALS
- ゴルフ経営原論 第一部 ゴルフビジネス -
Section 5 地域ゴルフ活性化とクラブサークル研究
-4 | 団塊世代復活とジュニア ゴルファー育成研究 |
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ゴルフは商業スポーツとして大きな発展を見たため、メディアに乗ってプロトーナメントが盛んになり、用品界が便乗してスポーツ界の中でも突出したマーケットを形成するに至った。だから一般的にはメディアマーケティングやプロスポーツマーケティングの領域で扱われていると思うが、個々のゴルファーを対象にするならば、極めて地域性の強いエリアマーケティングとして扱わなければならない。
メディアは衛星放送を使ってワールドトーナメントを中継しているし、用品界はメディアスポンサーとして新商品の販売に利用しているからマーケティング戦略として成功しているが、ゴルファーの育成やゴルフ人口の増加に与える影響は未知数である。つまりサッカー、野球、スケートファンと同じように、ゴルフは好きだがプレーはしないゴルフファンが増え続けている点に注目しなければならない。コース、練習場、フィットネスクラブなどの施設産業は利用者あってのビジネスである。だからプレーヤーと施設利用者の増加を図ることがマーケティングの全てと言える。
従来のゴルフビジネスは完全に都市依存型で、地方に群集するゴルフコースのメンバーの大多数が大都市の住人であり、ビジターも大都市から集めていた。経済情勢や社会変化に伴って都会人の行動原理にも変化が生じ「安・近・短」といわれる「近場で時間をかけず安く済ませる」コンビニ化傾向が強くなってきたことから従来と異なったマーケティングが必要とされる。
世界的な経済情勢の変化に伴って先進国の可処分所得が減少し、IT社会の到来によって消費者情報が豊富になり需要側が経済合理性を追求し始めた。従来のゴルフ界を支えたステータス、豪華主義、贅沢志向、一流名門などのキ-ワードは悉く過去の遺物となり、今やポピュラー、家族主義、倹約志向、庶民文化などのキーワードに置き換えられつつある。このような経済情勢や社会変化に対応するマーケティングが求められるのは時代社会の変化に伴い、従来ビジネスに危機が迫っていることを意味している。
地域ゴルフ
如何にメディアが発達しIT社会が到来しようと、ゴルフそのものは500年前と何ら変わることはない。ゴルフをすること、巧くなろうと練習することは人の行為そのものだから100年後も変わらないだろうが、ゴルフとの係わり方は決定的に変わるに違いない。日本人の暮らしが本格的に先進国化したのは最近のことで、ゴルフライフに関しては未だ発展途上国並みであることは明らかだ。
先進国では失業者や年金生活者でも毎日ゴルフができるほど料金が安い理由は基本的に経営合理化が進んでいることによる。通常先進国のパブリックコース料金は1R2000円程度であるから、ゴルフ場経営は年間6000万円から8000万円程度の売上で維持できる体制になっている。つまり年間3万人から4万人の延入場者による地域コミュニティとして、1コース当たり1000人程度のリピーターで経営が成立っている。経営感覚的には日本の中堅練習場と同じ規模で、地域の人達が利用する地域コミュニティである。例えば世界最古のパブリックコース・セントアンドリュウスでは年間8万円程度の会費を払えば1年中好きなだけプレーできる。だから年金生活者が仲間や孫と普段着姿でサンドウィッチを食べながら、公園感覚でプレーしている様子は地域コミュニティそのものであるが米国、豪州、カナダのパブリックコースも同様の光景が見られる。
現状で日本のゴルフクラブは地域コミュニティ化していない。日本のクラブ制度は諸外国と異なり、基本的には同好の集まりというより出資会員の組織と見るべきで、会員の権利は予約優先権と優遇料金制度、月例競技出場権とハンディキャップサービスが全てである。会員以外は家族もビジターとみなされ同伴しても優遇されることは殆んどない。日本のゴルフクラブで会員家族がくつろぐ姿を見かけないのはシステムの違いによるものである。またクラブがコミュニティ機能を持たないために会員家族の結婚式、誕生会、祝賀会、メモリアルパーティなど交流の場もないから、会員同士の関係も疎遠である場合が多い。
欧米諸国のゴルフクラブでは教会と並んでコミュニティ機能を果たしており、それゆえに会員家族の人種や宗派が制限される場合が多いが、米国でもこの種のコミュニティに属しているのはプライベートクラブ200万家族800万人くらいと思われる。米国ゴルフ界が白人プロテスタントによって支配されているのは、このクラブコミュニティがゴルフ文化の基盤になっていることによるが、このプライベートクラブは会員家族以外いっさい入場できない完全閉鎖社会でありビジネスやマーケティングとは無縁の存在である。クラブの性格やシステムの相違を理解していないと、ゴルフ場経営やマーケティングを根本的に誤解する恐れがあるから注意しなければならない。
クラブサークル研究
米国のゴルフ人口は前述したプライベートクラブ家族の三倍以上、2700万人とされるが、それは低料金のパブリックコースがプライベートコースの三倍に匹敵する1万2000コースもあることを意味する。プライベートコースが会員年会費(平均$5000)によって支えられているのに対し、パブリックコースでは積極的なマーケティングによって市場を開拓し、顧客の誘致を図らなければ存亡の危機にさらされる。地域に無数あるコミュニティ・クラブサークルを育成誘致し利用者の増加を図っているが、経営合理化による低料金高品質サービスの競争優位が勝負の決め手となる。つまりゴルフマーケットの70%が完全競争市場によって成り立っている米国ゴルフ界では、ファミリーゴルフだけでなく地域のクラブサークルを育成するマーケティングやプロモーションによって来場者の安定維持、つまり売上の安定維持を図っている。
米国のゴルフ場経営の殆んど全てがPGAプロの請負制になっているため、経営者であるプロは自らがリーダーとなってクラブサークルの育成や指導に当たる。USGA基準によれば10名以上の仲間がクラブ規約を定め、キャプテン及びクラブ委員を選出して競技会を開催すれば、所属コースがなくても公認クラブに認定される。だからパブリックコースでは家族仲間だけでなく、いろいろな種類のコミュニティサークルが結成されプロの指導のもとに日常的なクラブ活動が営まれている。
パブリックコースはクラブサークルの打合せ場所であり、練習の場であり競技の場であるからカスタマーが頻繁に来場してショップやレストランを利用する。クラブサークル育成が重要なマーケティングテーマになっているのは、ニューカスタマー開拓のみならず、関連部門への波及効果も狙っていることを見逃してはならない。クラブサークルは公序良俗に反しなければ目的趣旨を問われないのでジュニアクラブからシニアクラブ、レディスクラブからシングルマザークラブまで実に多彩だ。
最近はインターネットによる情報発信機能が進んだため、会員募集からイベント案内、クラブ交流が活発に行われている。例えば2005年、NGFワールドクラブから南カリフォルニアのエンジェル・ナショナルゴルフクラブに交流試合を申し込んだが、インターネット広報によって「ハンディキャップ18前後の男女12名による二日間団体競技」に参加する選手を二週間ほどで揃えてくれた。このようにインターネットを使ったパブリックコースのマーケティング&プロモーション活動によって、多くのコミュニティ・クラブサークルが相互依存関係を保ちながら充実したクラブ活動を実施していることが理解できる。
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