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THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ経営原論  第一部 ゴルフビジネス  -
第四章-1 経営マネジメント
Section 3 目標と情報を共有するネットワークシステム

チームワークは同一企業、同一組織内でできるものとは限らない。インターネット社会は地球規模でネットワーク組織を構築することに成功し、時間・空間の障害を乗り越えてチームワークの領域を広げている。いまビジネスの世界で起きているネットワークの世界的な広がりは、チームワークという仕事の連帯性と成果という生産性の向上に結びつく形に発展しなければならない。
IT社会は従来の常識や既成概念を超越して、私たちが想像すらしなかった世界になりつつある。テレビのスイッチを入れた瞬間、世界のニュースを聴き、アメリカで開催されているトーナメントを観戦し、世界中から届くメールを空けて返信するとは誰が想像しえたろう。私たちは知らぬ間にサイバーワールドに暮らしているのである。ドルやユーロの相場が私たち庶民の生活に直接影響し、買い物に出掛ければマーケットに世界の商品が陳列され、世界の情勢を肌で感じる。日常生活や職場でも何の疑問もなく報告や連絡、相談は殆んどケイタイやメールで行っている。それでいて身近にある家族や職場のチームワークが崩壊し、アノミー減少が組織の色々な処に現れている。このような社会にあってビジネスを有利に展開する方法として情報を共有するネットワーク組織の展開が益々注目されるようになるだろう。

ソフトの公開

21世紀になってからソフトの公開が世界の常識になってきた。いま私たちが日常的に使用しているパソコンは殆んどはマイクロソフト社のアプリケーションソフトを使っている。インターネットではグーグルやヤフーなどを使っているが、まさか世界中をオンラインで走り回っているとは夢にも思わないし、知っていても殆んど意識していない。保守的な人や閉鎖的な人は日本独自の常識を主張したり、鎖国を主張するが今や全く不可能なことだ。世界基準の公開ソフトや国際商品の資源がなくては一日も持たない。第二次世界大戦は石油資源を封鎖されて始ったことを忘れてはならない。今や世界はソフトや情報を封鎖されたり関税障壁を設けられたら、またもや世界大戦の原因になりかねないことも忘れてはならない。
1987年、日本のゴルフ界は文部省が「外国技術ノウハウの導入禁止」という情報鎖国令を出しことによって、世界のトレンドから30年遅れてしまったことは大きな損失であった。2003年、経済産業省が「このまま対策を講じなければ2030年までに日本のゴルフ産業は崩壊するだろう」と警告している真意は、外国技術ノウハウの導入を急ぐことにある。
USGA米国ゴルフ協会はコースレート査定やハンディキャップシステムの公開と世界標準化を行っている。PGA Tourは世界オープンシステムでトーナメントの国際化を図っている。US NGFは会員になれば全てインターネットで情報を入手できるシステムを採り、NGF FAR EASTも2010年から会員に対して教育プログラムの全公開に踏み切った。このようなソフトの公開は世界のマーケットや業界全体を標準レベルに引き上げる効果がある。
グローバル化はソフトの公開によって必然的に起きるものであって、情報鎖国や関税障壁などの規制によって阻止できるものではない。情報共有はグローバル社会から生まれる結果であるから、21世紀のビジネスの在り方として誰もが情報を共有していることを前提にしなければ全て始らない。

情報共有の意味

20世紀には情報ソフトそのものが重要な戦略資源だった。マイクロソフト、ソフトバンクなど情報ソフトを持つ象徴的な名称の企業がマーケットをリードし独占的利益を得た。ところが21世紀になるとグーグルはじめ情報ソフトを公開し不特定多数に利用させた企業がマーケットをリードし始めた。情報ソフトは守るものから公開するものに変わり、利用させないものから利用してもらうものに変わった。
時代社会がこのように変わると、公開された情報ソフトを利用できないものはマーケットに残ることもできなくなる。供給者側があらゆる情報ソフトをインターネットを通じて公開すれば、需要側は重要な情報を豊富に入手し自由に選択することができる。供給者より豊富に情報を有する需要者は情報発信もできない供給者の存在を知らない。つまり需要者から見えない供給者はマーケットに存在しないのと同様な立場に立たされたのである。聞いたこともないゴルフ場・練習場やメーカー・ショップはマーケットというよりカスタマーから忘れられた存在になってしまうのである。
供給者は需要者と同じ情報を共有し、自らも情報発信者となってマーケットやカスタマーに存在をアピールしなければ存続すら難しい時代が到来した。IT革命とか情報通信革命といわれる時代の厳しい現実である。時代の流れや社会の変化に逆らえるものはいないし、ましてビジネスの世界に生きるものが逆らって生きられるわけがない。産業革命の時代も明治維新の時代も、人々はみな時代に取り残されぬよう必死になって生きたに違いない。バックグランドや実績のない若者やカネもモノもないヒトは絶好のチャンス到来と考えて夢や希望を抱いたはずだ。情報を共有するということは新しい時代に生きることであり、ネット社会に参入することである。これらは全てビジネスの世界の掟であり原則である。

ネットワーク

情報ソフトを共有するものが連携してマーケットに参入し、集団でマーケティング展開する戦略をネットワークという。ネットワークはネット社会の到来によって益々発展し、弱小企業や個人事業者が巨大グローバル企業に対抗して生き残る唯一最良の手段となりつつある。
20世紀末期から21世紀初頭にかけて中小企業が大量倒産し、小売店や個人事業が軒並み閉店した真の原因は新しい時代や社会の到来についていけなかった結果で、決して不景気によるものではない。IT時代のネット社会に参入し情報共有してネットワークを組んだものはニューマーケットやニューカスタマーを探索し積極的にビジネス展開している。零細下請会社が提携して独自開発技術や伝統技術を共有し、世界オンリーワンチームを結成してグローバルマーケットに打って出るようになった。ノウハウや特許技術はノーベル賞受賞クラスのものでも単独ではビジネスにならない。関連分野の先端技術と結合して初めて製品や商品として完成し、市場参入してビジネスとなる。
身近にある小規模小売店や個人事業にしても、ありきたりの商品や仕事をビジネスにしようとしても、消費者の方が豊富な情報を持っていて容易にカスタマーなってくれない。少なくとも地域ナンバーワンかオンリーワンの商品サービスをエリアマーケットに提供できなければ、地域に生き残ることも難しい。地域ナンバーツーやワンノブゼムは、大規模小売店やネットワークチェーン店に敗北してシャッターを下ろしたのである。
ネットワークは単に情報共有するだけではない。ネットワークグループとして共同戦略を立て、戦略商品や戦略サービスを開発してグローバルマーケットに挑戦するという目標をもっている。新しい時代や社会の到来を絶好のチャンスと受け止め、個人的な夢や希望を超越した「共通の志」という大きな目標を掲げてネットワークしているのである。
ネットワークグループは新たな需要を開拓してニューマーケットを創造する。ネット社会は20世紀末に存在しなかったからケイタイ、メール通信、ネット販売、バーチャル取引、オンデマンド学習などことごとく存在しなかったことになる。私たちは知らず知らずのうちにネット社会といわれる新しい時代社会に生きているが、間違ってはならないのは私たちの生活環境は変わっても、私たちの生活基盤である衣・食・住や精神基盤である思想・文化・教養は何百年、何千年経っても何ら変わらないことである。ましてビジネスという仕事や職業の領域で、方法手段が変わったからといって人間の本質や生活の原則は何ら変わらないことを忘れてはならない。