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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ経営原論  第一部 ゴルフビジネス  -
第四章-1 経営マネジメント
Section 5 ITネットワーク時代の共通ソフトプログラム

IT社会のグローバルマーケットでは、個人や弱小企業が大企業と互角の勝負ができるといったが、無条件で勝負できるわけではない。オンリーワンのサービスクオリティを有するか、何らかの条件の下で地域独占の地位になければ大企業や大資本に太刀打ちできるわけがない。弱肉強食及び自然淘汰は資本主義の原理だからである。
原理そのものを変えた社会体制を社会主義、共産主義というが、資本主義原理の下で個人や弱小企業が勝利するには戦略が必要である。その戦略にオンリーワンとネットワークがある。オンリーワンはパフォーマンスを最大限に生かした戦略で一般的には地の利・人の利・時の利がある。
地の利を生かしたオンリーワンには銀座四丁目のデパートとか善光寺門前のそばやがある。
人の利を生かしたオンリーワンにはスーパースターのいるスポーツチームとかカリスマ経営者の創業会社がある。
時の利を生かしたオンリーワンにはブームに乗った商品や最古の伝統・技術などがある。
しかし、通常オンリーワンは限られた条件の下で成立するから特定のものに限定されてしまう。だから誰もがこの戦略を導入する訳にはいかないのである。そこで近年盛んに導入されるようになった戦略に共通ソフトを利用したネットワークビジネスがあるが、共通ソフトとしてブランドを利用たもの、マネジメントソフトを利用したもの、商品特性を利用したものがある。

共通ソフトの戦略

共通ソフトとしてブランドを利用したビジネスではルイヴィトン、ココシャネル、ユニクロなどが典型だろう。ブランドにマネジメントソフトを利用したビジネスにマクドナルド、セブンイレブン、フェデックスなどがある。商品特性を利用したものはパソコン、インターネット、ハイブリッドカーなどが考えられる。これらはいずれも他人のソフトパフォーマンスを利用したビジネス戦略でオンリーワンというわけにはいかないが、特性価値を限定利用した戦略とも考えられる。資本主義原理である完全競争のフリーマーケットで競争優位を保つうえで、共通ソフトの限定使用は大変有効であるが、それは特定領域で寡占市場を創造できるからである。
一般に多くのビジネスは自由にマーケットインできる代わりに激しい競争にさらされる。ビジネスにソフトやノウハウを創造するには長い歳月と深い経験を要するため、多くはそこに至る前に退場を余儀なくされる。だからビジネスに独自のソフトやノウハウを持つことは容易なことではないし、まして今日のように供給が需要を上回るような厳しい競争市場においては、共通ソフトを利用して計画的に地域寡占市場を形成することは常套手段になりつつある。周囲を見回してもコンビニエンス・ストア、コーヒーショップ、レストラン、スーパーマーケット、衣料品店、飲み屋から理髪店まで共通ソフトを使用するネットワークチェーンに次々変わっている。自由業の代表といわれた医師・弁護士・会計士も共通ソフトを利用したネットワークに参入しなければ生き残ることができないといわれている。これらの現象は全て資本主義の成熟と情報通信革命の結果である。今やビジネスの世界で独自ソフトを開発するか共通ソフトを利用するかは存亡をかけた二者択一原則と考えて間違いない。

ITネットワーク

情報通信革命は第三次産業革命とも言われる。第一次産業革命は蒸気機関の開発と印刷技術の発達によって進められた。第二次産業革命は内燃機関の開発と通信技術の発達によって進められた。第三次産業革命はコンピューターの開発とインターネット技術の発達によって進められている。第一次・第二次産業革命時代は石炭・石油などの鉱物資源が財産となったが、第三次産業革命では知識・ノウハウなどの知識資源が財産となる。物的財産の移動手段は鉄道船舶及びトラック航空機によるが、知的財産の移動手段はパソコン・インターネット及びIT機器による。従って第三次産業革命時代のビジネスがITネットワークによって発展することは自明の理と考えなければならない。
いずれの産業革命においても初期数十年は景気低迷と社会混乱が起きているが、20世紀末期に起きた第三次産業革命においても、21世紀初期までは景気低迷と社会混乱が続くだろうといわれている。つまり、いずれの時代においても財産の輸送手段となるインフラが整備されるまでの数十年間は、どうしても過渡期の問題が発生するということらしい。しかし、日本におけるITインフラは確実に整備されてきている。ケイタイの普及はもとより、インターネット利用者も確実に増えているし学校教育にも導入されている。ITネットワーク社会は地球規模で確実に発展していることは間違いない。
先述した共通ソフトを利用したネットワークビジネスもITネットワークによる経営マネジメントの変化に他ならない。従来のマネジメントシステムは人の能力や経験に頼ったアナログ管理方式であったが、現代のマネジメントシステムはソフトプログラムを使ったデジタル管理方式である。「システムとは平凡な人に非凡なことをさせる機構である」というピーター・ドラッカーの言葉どおり、現代の経営マネジメントは一定の教育訓練を受けた平凡な人が、マニュアルに沿ってオぺレーションする管理システムなのである。
従来の管理システムは人が人を管理する方法だから、人間の感情移入が避けられずに常に差別や偏見が発生し、協調が生まれる前に対立が生まれてしまうという大きな問題があった。現代の管理システムは人がマネジメントシステムを管理する方法だから、管理者の感情が移入されたり対立を生む余地がない。
例えば身近にあるコンビニエンスストアは教育訓練された店長と非常勤パートタイマーによって経営される典型的な零細小売商店である。しかし実体は高度な経営科学が満載されたスーパーマネジメントシステムの集積体で、売上管理分析・仕入管理・利益管理・在庫管理・品質管理・顧客動向分析・マーケティング・スタッフ教育など専門家集団の頭脳が集積されている。まさに平凡なスタッフによって非凡な仕事ができるシステムが構築されており、「できるかできないか」ではなく「やったかやらなかったか」をチェックすればよいほど作業標準化されている。これはまさに経営マネジメントシステムが共通ソフトとしてITネットワーク化されている典型的な例である。30年遅れているゴルフビジネスの世界がITネットワークによってマネジメントされるのは、最早時間の問題と考えてよいだろう。

ゴルフの共通ソフトプログラム

ゴルフの世界は永年に渡り我流と月並が主流だった。それは技術の世界も経営の世界も見よう見まねで伝承されてきたからである。先輩に教えてもらうか近隣に見習って自分なりに工夫する手法だから我流か月並になるのは当然だが、マネジメントサイエンスの進化によって、基本原理や原則が明らかになり原理原則に則った合理的手法が開発され情報公開される時代になると、我流や月並はプロフェッショナルの世界では通用しなくなる。例えば技術の世界で9種弾道を自在に打ち分けることは基本になっているが、30年血の出るような修行の賜物では18歳の少年に軽くあしらわれる。経営マネジメントの世界でパソコンデジタル管理は基本になっているが、アメとムチによる恫喝管理や酒席を使ったノミニケーションでは臨時パートにもあしらわれる。
ゴルフ技術の世界で共通ソフトは「ボールフライトロウ」である。万人普遍の共通原則に従って個人個人のパフォーマンスを開発し育成する方法は、秘訣でも特許でもなく誰でも使える共通ソフトになっている。反対に知らなければ時代遅れとして見向きもされない。
マネジメントの世界で共通ソフトは「ITネットワーク」である。旧軍隊で開発されたホウレンソウ=報告・連絡・相談もITネットワークによって学生やデモ隊の共通ソフトとして使われている。指令・忠告・伝令ネットワークでは情報共有や情報伝達が不完全すぎる。ITネットワークは特殊な手段ではなく、日常生活の中にもパソコン・インターネット・ケイタイメールによって共通ソフト化しているが、目的に沿ってシステマティックに利用されなければ戦略にも戦術にもならない。
インストラクションやプロモーションの世界でも、3Dテキストを使ったグループ指導や教程指導、3Dトレーニングシステムやステップアップスパイラル、IDクリニックやITマネジメントシステムなど最新の共通ソフトが揃っている。ネットワークに積極的に参加しないと、時代に遅れる前にカスタマーに遅れをとることになるだろう。

 

参照:
「ゴルフ基礎原論」、「ゴルフ経営原論」